内容説明
百の植物に百の色が生まれる。自然界の恵みの色に惹かれ、望みの色を生み出すため一生をかける染色作家が、様々な人や色との出会いを語った大仏次郎賞受賞エッセイの新装改訂版。
目次
色と糸と織と
一色一生
糸の音色を求めて
色と音
かめのぞき
天青の実
織探訪記
住まいと影
今日の造形〈織〉と私
プレ・インカの染織を見て〔ほか〕
著者等紹介
志村ふくみ[シムラフクミ]
1924年滋賀県生まれ。染織作家。植物染料を使った紬織で1990年に重要無形文化財保持者(人間国宝)、1993年に文化功労者、2004年に近江八幡名誉市民となる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はつばあば
60
染色についていろいろ読んで見ても、実際に眼にするのとでは全く違う。志村氏の来し方・商売の有りよう・・これも色々宣う者もいる。本の世界と目にした織物と着物。至福の時を過ごせた。縮緬地に草木染の我が着物、死出の衣装にするには勿体ないと悟った2016/03/13
文庫フリーク@灯れ松明の火
55
ちゅもママさんの感想UPに再読。畠中恵さん『つくもがみ貸します』で出てきた香炉の【蘇芳】(すおう)ご記憶の方も多いはず。もともとは木の芯材で、この木片をたき出してでる赤色が【蘇芳】 志村さんは『あらゆる赤の中で、この蘇芳の赤ほど、真っ当な女をあらわして嘘のない色を知りません』と書かれています。志村ふくみさんの紬織着物作品に【蘇芳段ぼかし】有りますが、ぜひ検索して頂きたいです。繭から糸を取り、蘇芳の赤を引き出し、染めて機(はた)織りした東京国立近代美術館蔵の作品です。2013/05/25
文庫フリーク@灯れ松明の火
52
新装改訂版を購入。著者をして『あらゆる赤の中で、この蘇芳(すおう)の赤ほど、真っ当な女をあらわして嘘のない色を知りません』と言わしめた【蘇芳】の赤。志村ふくみさんの作品【蘇芳段ぼかし】の写真に目を奪われる。東京国立近代美術館蔵のこの作品、いつか必ずこの目で実物を。【匂蘭】こうらん【梔子熨斗目】くちなしのしめ【桜かさね】【水瑠璃】みずるり【紫紺格子】しこんこうし【燭】しょく【松風】と名付けられた作品・写真でさえ心を揺さぶる。滋賀県立近代美術館蔵が2作品。何年のちになるか分からないが、滋賀まで行くぞ。2013/05/25
Comit
46
市立図書〜染織家で随筆家である著者、染織との出会い、人生において永久を受けた様々な人との出会いをまとめたエッセイ集。作者は“染織家“も“文筆家“も同じ“職人“だと表現していましたが、この作品を読むと納得。染織家としての半生を綴った一章、ここまで洗練された文章を読んだのは初めてです。キートン山田さんの著書で紹介されており手に取った一冊。一読の価値あり✨2022/07/12
森の三時
36
染織作家志村ふくみさんを知ったのは、国語の教科書に載っていた大岡信さんの「言葉の力」という随筆であった。志村さんの染めた糸から織られた美しい桜色の着物は、実は、桜の花弁からではなく、黒いごつごつした皮から染めたものだという。そこから大岡さんは、言葉の世界の出来事に繋げて展開していくのだが、少年だった私の心は大きな真理を発見したような感銘を受けた。さて、志村さんの随筆である本作も、その道を極めた人の言葉だけあって大きな力があり、そして美しかった。色を求めて植物に向かう姿勢は、まさに一色一生であった。2016/11/26