内容説明
青空のむこうから、ひとりの少年がおりてきた。やり残したことがあるから…。ぼくはまだ決めかねてた。アーサーはぼくに背中をむけて歩きだした。そのとたん、エギーやママやパパや友だち、ぼくが知ってる人たちの顔がつぎつぎにうかんで、どうしてももういちど会いたくなった。みんながいなきゃ生きていけない。死んでることだってできない。すぐにぼくは決心した。アーサーのあとを追いながら呼びかけた。「待って、アーサー。ぼくも行く」アーサーは立ちどまってぼくを待った。それからふたりでかけだした。“生者の国”を目ざして。
著者等紹介
シアラー，アレックス［シアラー，アレックス］［Ｓｈｅａｒｅｒ，Ａｌｅｘ］
イギリスの作家。１９４９年生まれ。３０以上の仕事を経験したが、２９歳のときに書いたテレビのシナリオが売れて作家になる。１４年間テレビ、映画、舞台、ラジオ劇の脚本などを書いたのち、小説を書こうと決心する。最初の作品は“Ｔｈｅ Ｄｒｅａｍ Ｍａｋｅｒ”。イギリスのサマセット州に家族と住む
金原瑞人［カネハラミズヒト］
法政大学教授。翻訳家。多くの絵本、児童書、ヤングアダルト小説を翻訳している
杉田比呂美［スギタヒロミ］
１９５９年東京生まれ。絵本や本の装幀・挿絵などを多数手がける
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェルナーの日記
57
通常版と読み比べるため本書を手にとった。ストーリー自体に大きな変わりはなく、語句の注釈を増えたくらいと思う。 なので感想のレビューは通常版にゆずるとし、注釈に注目した。本作のなかでアーサーのゲームに“ウォーハンマー”がでてくる。これは昔に流行ったＴＲＰＧのこと。数人で対話形式にて、ＲＰＧを遊ぶといったゲーム。注釈にはプラスチックの人形とあるが、本当は鋳物の人形が正解。映画『Ｅ．Ｔ．』の冒頭で、エリオットの兄マイケルと友達たちがプレイしている(ちなみ彼らがしているのは、“Ｄ＆Ｄ”（ダンジョンズ＆ドラゴン）。2015/05/25
紫
29
読書メーター555冊目。残酷なようだけど、死んでしまったら、そこまで。志半ばで死んだ歴史上の人物も一般市民も、みんなそこで途切れてしまう。それは平等だけど、周囲の人達にどんな影響を与えるのかは、その人の生きてきた道次第。そして死んでしまった側、ハリーのことを考える。大好きな家族と別れ、人生がここで途切れてしまったこと、あまりにも重い事実と向き合っている。それをふと忘れてしまうような語り口。重い事実をすごくすごく考えられた文章でハリーに語らせていました。2014/11/08
anne＠灯れ松明の火
5
ブロ友さんの紹介で読んだ１冊。今、自分が突然死んでしまったとしたら、その事実を受け入れられるだろうか？ 自分の大切な家族や友だちの死を受け止められるだろうか？ この年になっても、身近な人の死に接していない私は、正直実感できない。いつ死が訪れてもいいように、後悔のない生き方をしなければ、と思っても、なかなかそうは行かない。まだ小学生のハリーを襲った突然の事故。直前に喧嘩をした姉に投げつけてしまった暴言。ハリーは「忘れ物」を取り戻し、安らかに「かなたの青い世界」に行けるのだろうか？ 2010/10/19
なかち
4
死後の世界。やり残したこと。自分のいない世界。「ほとんどの人は死んでるって実感がないんじゃないかって気がする。生きてる人たちのほとんどが、生きてる実感がないのと同じように」。アーサーとの旅。原始人のウグ。姉との喧嘩。一度死ねば、もう二度と死ぬ心配をしなくていい。水槽のなかからその世界をながめる金魚みたいな気分かもしれない。やり残したことって、愛にまつわることが多いから。自分のお葬式が見られなかったのも残念。ジェリーの手紙。ほんと、死んでるのがはずかしくなってくる。ヒットチャートの一位の局も知らないなんて。2012/03/07
サウスムーン
3
職場にあったジュニア版。設定が興味深く出だしから引き付けられる。幽霊になったハリーが学校や家族のもとを訪ねた時のハリーの心理描写は見事。不仲だったジェリーの手紙を読む場面では涙がにじんだ。ハリーは死ぬことで大きく成長した。それが心地いい。結末は気持ち良すぎるほどハッピーエンドで安心して小学生に勧められる。2014/02/26
