内容説明
明治19年(1886),三浦半島の突端近くに三崎臨海実験所が創設された。眼前に広がる相模湾は世界有数の海産動物の宝庫、その宝庫からもたらされるガラス海綿、オトヒメノハナガサ、クラゲムシ、メンダコ、深海性ナマコ等々の探究は欧米の学界を驚嘆させ、日本の動物学が自立する礎となった。それから100年、その三崎臨海実験所に去来した人々と、真の主役である海の生きものたちとのかかわりを通して、本邦動物学の歩みをたどってみよう―。
目次
1 三崎臨海実験所(ペニキース島臨海実習会;モースの「江の島臨海実験所」;デーデルラインの三崎訪問;若き日の箕作佳吉;臨海実習事始)
2 入船時代の実験所(三崎臨海実験所の誕生;入船時代の始まり;『動物学雑誌』に見る三崎;アラン・オーストン;三崎の熊さん;三崎の名を高めた動物たち;日本動物学の自立)
3 油壷時代の始まり(三崎町から油壷へ;動物学の宝庫;欧米からやってきた人々;動物学臨海実習会;箕作時代の終焉)
4 大正の油壷(実験所の大拡張;飯島魁教授;明治から大正へ;谷津直秀と実験動物学;幻の実験所改造計画;関東大震災)
5 昭和の油壷(重さんの登場;生物学御研究所と相模湾;水族館と新研究棟;分類学・系統学の衰退;太平洋戦争前夜;特殊潜航艇基地となった日々;廃墟から立ち上がる;実験所の黄金時代)
付表1 三崎臨海実験所略年表
付表2 歴代所長・所員一覧
付表3 水族室・水族館観覧者数
付表4 日本の臨海実験所