内容説明
著者の体験色濃い神霊サスペンス(『巫女の棲む家』)。役者消失!?けれん味溢れる連続殺人(『妖かし蔵殺人事件』)。
著者等紹介
皆川博子[ミナガワヒロコ]
1930年、京城生まれ。東京女子大学英文科中退。1970年「川人」で第2回学研児童文学賞を受賞後、72年、児童向け長篇『海と十字架』でデビュー。「アルカディアの夏」で第20回小説現代新人賞(73年)、『壁―旅芝居殺人事件』で第38回日本推理作家協会賞(85年)、『恋紅』で第95回直木三十五賞(86年)、『薔薇忌』で第3回柴田錬三郎賞(90年)、『死の泉』で第32回吉川英治文学賞(98年)、『開かせていただき光栄です』で第12回本格ミステリ大賞(2012年)、第16回日本ミステリー文学大賞(13年)をそれぞれ受賞。ミステリ、時代小説、幻想文学等幅広いジャンルで作品執筆を手がける(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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雪紫
50
「巫女の棲む家」・・・解説やインタビュー皆川さんの実体験大半なのもあってか、重いし、それもあってか読みにくい。破滅が約束された物語感満載だが、引きずられもう戻れない空気や望む答えの得られない自動書記とそれに一番すがる主人公、ある意味解釈任せのあえて投げっぱなしな結末で更なる重さを味わう。「妖かし蔵殺人事件」当主が代々消える蔵と歌舞伎役者とその母親の変死にそんな繋がりが、と驚くとともに動機がわりと救いない。最後の消失は救いか否か・・・。2021/05/26
fukumasagami
18
敗戦後の東京で医師の父親と彼に取り入った詐欺を働く霊媒師から自動書記とされた日馬黎子、彼らが催す降霊会はやがて集う人々の思惑を孕んで教団へと発展していき、死んだ兄との交感を信じてしまった彼女はその中心となっていくー。『巫女の棲む家』 若い舞台役者が手賀沼の本番舞台から消失、浅草で江戸期から営む舞台小道具の貸出商の蔵の中で縊死した姿で発見され、その母親も自宅で殺されていた。この商家の主人は先頃消失していた。それぞれの現場に居合わせた雑誌編集者田浦は役者の自殺と思えず事件に踏み込むー。『妖かし蔵殺人事件』 2021/02/13
秋良
15
新興宗教の巫女役に担ぎ上げられた少女時代をベースにした前編。それぞれの大人たちの思惑に翻弄される哀れな主人公が、兄弟を死に追いやってしまう残酷な結末。救済措置が死っていうのも皆川博子。後編は歌舞伎に絡めたけれん味溢れるミステリ。澤村田之助のことマジで先生好きだなー!トリックから人間関係から、全てが歌舞伎っぽい。最後にはインタビューと読書リストも収録。今は入手困難なものも多そうなので、こちらは辺境図書館を参考にすると良いかもしれない。2020/07/23
sui
5
51。「巫女の棲む家」がなかなかに入り込めなかった所為で途中一度は閉じてしまったのですが、読み切ると、しかも皆川さん自身の体験が色濃く反映されていたと知ると何とも言えない気分。何がホントで何がウソか。2作目の「妖かし蔵殺人事件」は分りやすいエンタメ色の作品で、一作目「虹の悲劇/霧の悲劇」よりは少し物足りない気はしつつ、歌舞伎題材な事もありとても面白く読んだ。田浦と川瀬の会話が、作中の凄惨な事件との緩和材のように笑わせてくれるのでいい息抜きになる笑。田之助だの梨園界だの、あぁ…いま無性に、歌舞伎が観たい。2020/09/10
漣
4
『虹の悲劇/霧の悲劇』よりやや盛り上がりに欠けるなあと思ってしまったけど(虹の悲劇の構成が好きすぎるというのはある)、やっぱり著者の人間の裏側を描く筆力はさすがだなと思った。あと主要キャラの名前がいつも綺麗だなー。付録もとてもお得感がある。2020/11/23