内容説明
漱石・鴎外を人気で圧倒しながら今では知名度ゼロの“明治娯楽物語”。その規格外の世界をよみがえらせる。朝日新聞&ジブリも注目する異才が描く、ネオ文学案内。
目次
小説未満の世界―明治の弥次喜多は宇宙を旅する
超高速!明治時代―五倍のスピードで万事が動く
庶民が愛した“明治娯楽物語”―日清・日露戦争で暴れまわる馬丁たち
“講談速記本”の帰還―無責任体制が生んだ娯楽の王様
地獄に落ちそうな勇士ども―長広舌の真田幸村二世&神より強い猪突猛進男
豆腐豪傑は二度死ぬ―ミスター講談速記本・桂市兵衛
“最初期娯楽小説”の野望―「舞姫」の主人公をバンカラとアフリカ人がボコボコにする
「科学」が生んだ近代キャラ―嫌われ作家の奇妙な冒険
“犯罪実録”という仇花―強くない、謝らない、いいことしない犯罪者たち
忍者がやりたい放題するまで―忍者復活の影にアメリカの怪力女あり
恐るべき子供豪傑たち―オトナをボコボコにする少年少女
不死の聖
著者等紹介
山下泰平[ヤマシタタイヘイ]
1977年生まれ、宮崎県出身。明治の娯楽物語や文化を調べて遊んでいる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
徒花
153
おもしろかった!明治時代の名作文学の裏で一般市民に手軽に読まれていた娯楽小説を、その時代背景などを交えつつ紹介する一冊。舞姫の主人公をボコボコにする話はごく一部だけど、突飛で無茶苦茶な話がこんなにたくさん消費されていたのかという驚きがある。文章もシュールなユーモアを交えたものです読んでいて楽しい。分厚いけれど、割とサクサク読み進められる。2020/03/23
古古古古古米そっくりおじさん・寺
81
これは面白い!いきなりおすすめする。本書は文学史に記されて来なかった明治の娯楽物語についての本。紹介される本自体の面白さに加えて、紹介する著者の文章が面白い。明治の講談速記本、書き講談、犯罪実録エトセトラ。私もかつて立川文庫を3冊ほど読んで、面白さと奇妙さに魅了された事があるが、それ以上に強烈な内容の講談や小説がある事に驚嘆させられた。人命の軽さに読んでいてしばしば声を上げて笑った。しかし著者は決して裏笑い的にばかり扱っているのではない。終章の記述にはなるほどと唸らされ、愛を感じた。輝くもう1つの文学史。2019/05/03
星落秋風五丈原
50
明治時代というのは様々な混沌が発生したようで、日本史の勉強で言文一致体だとかお札になった文豪とかの話はしたものの、本編に載っている書籍の事は誰も話してくれなかった。例えば弥次喜多アレンジ版。何とリアル弥次喜多がBLだったってホント?まあいいや。東海道を旅したのがオリジナルなら、二次創作ものは何と二人が宇宙に行く。えっその時代にもうロケットが?と思うなかれ。彼等は大砲の弾丸にへばりついて月へ行くのだ。いやだって燃えるじゃん!!無重力状態だし衝撃で大砲から離れちゃうよね? 2019/07/11
鷺@みんさー
40
タイトルだけでお腹一杯だが、中身はもっと混沌のごった煮であった。色々荒唐無稽な話が無秩序に紹介され、一つ一つのエピソードはそれなりに面白いんだけどだんだんわけがわからなくなってくる。つまりどういうことだ?と。が、こんな闇鍋にもちゃんと結びがあった。つまりは江戸の落語や戯作から、現代のクールジャパン的エンタメに至るまでに、明治の混沌が知らず知らず貢献していたんですよーということだった。ともあれ基本は「豪傑、なんでもありかーい」と突っ込んでればよろしい。ボリューミーすぎる感もあり。家系ラーメンのようだった。2019/07/13
Miyoshi Hirotaka
30
文学史に登場する作品は氷山の一角。水面下には無数の駄作が存在する。明治の大衆小説には、意識高い系が書いた娯楽小説や海外小説の翻訳、三面記事と大差ない犯罪実録、講談を速記した講談速記本があった。このうち、大衆に愛されたのは講談速記本。議会政治により一流の速記者が不足。二流、三流の速記者が不完全部分を補足したことで二次創作が発生。物語の人気キャラは徐々に変質した。無双キャラは科学の影響で強さに合理性が付与され、子孫という設定で少年少女が活躍した。これらは、様々な経路を経て現代の漫画やアニメの伏線になっている。2024/09/10