出版社内容情報
明和九年(一七七二年)、「行人坂の大火」の後の五鈴屋ゆかりのひとびとの物語。
八代目店主周助の暖簾を巡る迷いと決断を描く「暖簾」。
江戸に留まり、小間物商「菊栄」店主として新たな流行りを生みだすべく精進を重ねる菊栄の「菊日和」。
姉への嫉妬や憎しみに囚われ続ける結が、苦悩の果てに漸く辿り着く「行合の空」。
還暦を迎えた幸が、九代目店主で夫の賢輔とともに、五鈴屋の暖簾をどう守り、その商道を後世にどう残すのかを熟考し、決意する「幾世の鈴」。
初代徳兵衛の創業から百年を越え、いざ、次の百年へ──。
内容説明
ファン待望の特別巻!!
著者等紹介
〓田郁[タカダカオル]
兵庫県宝塚市生まれ。中央大学法学部卒。1993年、集英社レディスコミック『YOU』にて漫画原作者(ペンネーム・川富士立夏)としてデビュー。2008年、小説家としてデビューする。2013年『銀二貫』で第1回大阪ほんま本大賞を受賞し、2022年には第10回となる同賞の大賞を『ふるさと銀河線―軌道春秋―』で受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しんごろ
421
周助、大坂の暖簾をよくぞ守り通した!まさか智ぼんが絡むとは…。守り抜いたから、周助の決断が褒美となったのであろう。周助、大義である。菊栄、腹黒くはないぞ!更なる繁盛を目指して、惣ぼんと仲良くケンカ(トムとジェリーかっ!)しながら、店を繁盛してくれい!結、恋は叶わなかったけど、守るものがあって良かったな。忠兵衛も商い以外はいいやつかもしれないな。悪女でなくてホッとしたぞ!そして、幸!五鈴屋の発展を考えながら、賢助と仲良くな。幸と結、見えないだけでしっかり姉妹の絆が繫がってたな。五鈴屋は永遠に不滅だあ。2024/03/22
Sato19601027
361
高田郁先生に感謝の言葉を述べたい。「素晴らしい心温まる物語を書いていただいて本当にありがとうございました」『あきない世傳金と銀』本編13編、特別巻上巻に続く下巻は、幸の紡いだ源流から大海に流れる物語の大団円に相応しい珠玉の短編四編。五鈴屋八代目店主『周助』の優しさ。今や幸の大親友となった『菊栄』の決意。幼い姉妹を育てる妹『結』の祈り。創業から100年を経て、次の100年を考える『幸と賢輔夫婦』の熱い想い。素敵な物語に感動。井原西鶴著『日本永代蔵』の「ただ金銀が町人の氏系図になるぞかし」の言葉が胸にしみる。2024/03/06
修一朗
349
幸さんの物語がとうとう終わってしまった。幸の還暦を見届けられたので満足だ。100年で9代だもの波乱万丈だっだねぇ。菊栄さんや結など、気になっていた人の行末も見られた。特に結は気になっていたのだ。娘二人に恵まれてよかった。次世代のお話では桂が活躍しそうだ。木綿栽培の農家や染め物職人、相撲や歌舞伎役者。気になっている人はたくさんいるけどもどうもそれはおしまいみたい。次の世代のお話を楽しみに待ちますよ。その時は幸と賢輔が作った秘伝書「あきない世傳」が導いてくれるでしょう。次は呉服屋ではないお話になるだろうな。2024/10/19
ひさか
325
2024年3月ハルキ時代小説文庫刊。書き下ろし。 暖簾、菊日和、行合の空、幾世の鈴、の4つの連作短編。八代目周助、菊栄の江戸店、結のその後、大阪本店の九代目賢輔と妻の幸、と興味深い話が続き、堪能しました。あとがきによると高田さんにはまだ引出しがあるようで、続編が楽しみです。それはもしかすると数百年後の話かも。。。2024/05/21
ノアジ2002
301
「あきない世傳…」最終巻。一番気になった「結」、暗い糸が絡まるばかり…。そんな時娘2人が麻疹に羅漢して、長女の桂が健気にする妹の世話は、幼き頃の姉幸の姿を思い起こさせた。姉に詫びる気持ちに見せる、「喜びに満ちた行合の空」(泣いちゃいます)、結の幸せ、幸との再会も願います。「幸」は、宝暦の大火から江戸本店の再建を経て、賢輔と夫婦で大阪本店に戻る。9代目賢輔と共に五鈴屋の将来の舵取りを「商い世傳」と見定めてゆく。女性蔑視の江戸の世、呉服商いの紆余曲折、波乱万丈の家族、溢れる人間愛、とても心に残る作品でした。2024/03/05