内容説明
訳アリの遺品と「不幸」をコレクションするオギーの依頼を受けた俺は、我が子の首を切断した母親の元に赴く。彼女は懲役を終えて、朔太郎と礫という二人の息子と暮らしていたが、そこで俺は、その家族の恐るべき秘密を知ってしまう。未だに発見されていない子供の頭蓋骨はどこに?「メルキオール」とは、一体―世界の深奥を見つめ、人間の虚飾をも剥ぎ取る問題作にして傑作、装いも新たに登場。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
64
著者の第二長編。無国籍風な文体や衒学的な会話等、著者の作品を構成する様々な要素はもうここから完成していたのね。ある仕事の為、子供の首を切断した女に近づく男。その女の一家に隠された秘密が明らかになっていく…という粗筋から、著者の短編に見られる陰惨すぎるサイコホラーのような物を想像しつつ読んだのだが、ある一点を境に物語がとんでもない展開を見せるのは凄い。読んでいて『ドグラ・マグラ』をまずは連想させられる。その上、著者の文体が持つ乾いた詩情が加われば何をや言わん。後年の作品とは違い、著者らしさが生で出てるなあ。2022/05/02
おすし
23
残り3ページくらいまでは、なんとグロ抑え目な理路整然としたミステリだな!と思って読んでいたのだが…やっぱり夢さんだよガッツリ喰い込んでくるぜデブのレオタード並みに喰い込んでくる。僕の心のやらかい場所をむしり取って宇宙の彼方までぶん投げるようなラスト。最後まで仮名の“12”(トゥエルブ)としか語らない主人公、ひとり足りない天才カスパールは一体…?という座り心地の悪さ。パトカーで“12”が連れていかれるのをひたすら追いかけてくる朔太郎のシーンが切ない。忘れられない。2022/10/13
じゅむろりん
16
12(トウエルブ)と名乗る男が、我が子を殺害した母親の記録をするため廃れた町にやって来る。母親の美和は、どう見ても人殺しに見えない上に、長男の朔太郎、次男の礫(さざれ)には代々受け継がれた一族の掟があった。ハードボイルドな語り口に、顔を顰めたくなる痛々しく酷い描写。知的ながらケレン味のある会話と短絡的な暴力に、読みながら精神が疲弊していく感覚が生まれます。殺すか生かすかの極限状態がたまりません。ジャンルは、恐ろしくて刺激的で有害な「ファンタジー」でしょうか、、。2023/04/05
a子
12
何を読んでたのかわからなくなって行きつ戻りつ、漬けて寝かせて半年間。中盤からは怒涛の一気読み!何か不明な汁にまみれてドロドロな気分に浸りきる。紙一重の対極が広げっぱなしの大風呂敷の上で共存するミラクルな一冊。スキ。2023/08/10
vaudou
8
常人には思いつかないほど狂っているが、言い得て妙な比喩表現。平山作品でも随一にキレてるのでは。無国籍でややハードボイルドなテイストは後の作品への萌芽も感じる。2022/06/06