内容説明
同じ長屋に住む幸が昨日から帰って来ていない。心配になった縫箔師の咲は幸が働いている茶屋へ出向き、女将から母親の具合が悪く、実方に戻っているので店を休んでいるという話を聞いた。しかも実方は日本橋にある乾物屋だという。幸は親兄弟も親類もみんな亡くし、身寄りはいないはず…。咲は困惑する。そんな折、幸の姉と名乗る女が長屋に現れて―。人々に温もりや安らぎを、との願いを込めて絆を結ぶ、傑作人情時代小説のシリーズ第三巻。
著者等紹介
知野みさき[チノミサキ]
1972年生まれ。ミネソタ大学卒業。カナダ・バンクーバーにて銀行員を務める。2012年『鈴の神さま』でデビュー。また同年、『妖国の剣士』で第四回角川春樹小説賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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タイ子
91
遠い親戚より近くの他人とはよく言ったもので、幸の住む長屋のおかみさんたちの何と頼もしい事か。出産後の肥立ちが思わしなく寝込んでいるお路さんを助ける女性たちの話「お包み抱っこ」。タイトルの「松葉の想い出」は幸の過ぎし日の恋の想い出が甘酸っぱく描かれる。縫箔師の修行をした親方の元にいたかつての許婚が家出をしたとの知らせが入る。男の妻は幸との間を嫉妬、久しぶりの再会に幸の心は…。神狐のしろとましろ、修次の存在が幸の行く先を示してくれるのが温かい。シリーズ第3弾。2021/01/30
真理そら
79
親方や啓吾他色々な人が登場してきてますます物語は佳境に…。早く続きが読みたい。しろとましろのお使いも気になるし。2021/01/15
天の川
54
知野さんの女性を主人公にした2つのシリーズはいずれも職人として一本立ちを目指している。女性の職人が認められなかった時代に技術で男性職人に負けまいとする姿が健気だ。もう一つのシリーズの上絵師お律は幼馴染の茶問屋の跡取りの涼太と夫婦になったけれど、こちらの縫箔師のお律は修次との仲に踏み込めない。「松葉の思い出」で許嫁より仕事を取った咲だからか…と思った。とにかく、神狐の化身かと思われるしろとましろの二人がとても可愛い♪2021/09/29
はにこ
51
しろとましろのお包み抱っこええなぁ。あの二人?二匹?可愛いな。勘吉もこのまま素直に育ってほしいね。今回はききょうの大阪時代の話やお咲の以前の恋のお話と過去の恋についてがテーマになっていたね。過去の人か。私は焼けぼっくいには火はつかないけど、きっと赤の他人の気持ちにはならないだろうな。独り身で、しっかりしている咲だけど、修次が空振りしすぎてちょっと可哀想。2024/10/03
ひさか
39
2021年1月ハルキ文庫刊。書き下ろし。シリーズ3作目。お包み抱っこ、桔梗の邂逅、松葉の想い出、の3つの連作短編。出てくる子供達が可愛いです。しろとましろの不思議さも気になり、悪くない人情話ですが、ありふれた展開が、ちょっと残念です。2021/02/28