内容説明
冬が近づいて、そろそろ炬燵が恋しい神無月朔日の朝。なつめが修業先の照月堂に向かう道中、昨夜火事で焼け落ちたという家屋の前に人が集まっていた。その様子を見て、幼少時火事に遭い両親も亡くした自分が、大きく気持ちを揺さぶられないことに疑問を覚えるなつめ。照月堂では主・久兵衛が幕府歌学方・北村季吟から炉開きの茶会用にと注文を受け、菓子の道をさらに精進していた。一方その頃、江戸に向かって子連れ旅をする意外な人物がいて…。続々重版の大好評シリーズ第七作。
著者等紹介
篠綾子[シノアヤコ]
1971年、埼玉県生まれ。東京学芸大学卒。第4回健友館文学賞受賞作『春の夜の夢のごとく―新平家公達草紙』でデビュー。短篇「虚空の花」で第12回九州さが大衆文学賞佳作受賞。主な著書に『青山に在り』(第1回日本歴史時代作家協会賞作品賞)、主なシリーズに「更紗屋おりん雛形帖」(2017年第6回歴史時代作家クラブ賞シリーズ賞)など多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ぶち
98
口の中で雪のように溶けていく落雁。 なつめの恋もそんな風にはかないものでした。恋の辛さを知ったからこそ、兄の不義の恋もちょっぴり理解できるのかもしれません。でも、まだ躊躇する部分があるのか、とうとう兄とは会わずじまいに....両親の死の真相は未だ闇の中です。 辰五郎、安吉、富吉にも新たな波が押し寄せ、今後の展開がたいへん気になります。 2021/05/13
もんらっしぇ
77
前作で本シリーズの陰のテーマを「恋」の物語と見立ててみたのですが、本作では久兵衛と妻・おさわ。馴れ初めとその後のいきさつ。やはり継母だったのね~。おさわは郁太郎の本当の母の想い出をなつめに打ち明けます。一方で、物語は大きく動き出した感じ。とうとう姿をあらわした兄の慶一郎。深~く重い事情がありそう。父を亡くして照月堂に引き取られる富吉。遠く京にて悪戦苦闘の安吉と屈託を抱える長門との成長物語からも目が離せません。それにしても、菊蔵としのぶとの婚姻話の展開は少々残念。なつめとの縁はこれっきりなんでしょうかね… 2022/03/22
真理そら
68
京都編で寒天が登場した。ここまで作中で食べていた羊羹は蒸し羊羹だったことに気付かないで読んでいた。この時の長門の頑張りで今のような羊羹の原型ができるのかも?ついになつめは失恋するけれど周囲に気遣われるのは逆に辛いかも。あんなに嫌がらせされたのに氷川屋を実質助けようとする職人たちがいるのが信じられない(まずい菓子屋は潰れてもかまわんと個人的には思うのだが)今回のなつめは失恋も忘れるくらいあれこれあって気持ちの休まる暇がない。最終章に向かう動きの激しい今作だった。2022/05/18
優希
46
冬が近づく季節、なつめの心が大きく揺さぶられるのが辛かったです。色々切なくて苦しくなりました。2022/03/15
kagetrasama-aoi(葵・橘)
40
「江戸菓子舗照月堂」第七巻。なつめが恋をしたことによって、兄の気持ちが少し察することが出来たのかな?これから兄のこと、京都の実家のこと、どうなってゆくのか気になります。あと富吉に関しては、もう涙、涙です。なにかにつけて「照月堂」の主人の久兵衛の度量の深さに感じ入った今巻でした。2021/08/23