内容説明
天文十九年(一五五〇)、武田晴信(後の信玄)が北信濃の村上義清の戸石城に侵攻。しかし、攻めきれずに退却することに。徒士兵の雨宮左兵衛と、その小者の半助は殿の一員として戦うが、味方は総崩れとなる。北信濃の地に取り残された二人は落ち武者狩りの追手を振り切り、ひたすら味方の地を目指して山野を駆けずり回る。傷を負った佐兵衛を背負い、「何としても奥様の元に旦那様を連れて帰るだ」、その思いだけを支えに奮闘する半助。全知全能を懸けて逃げる、もののふの物語。壮絶な負け戦さ「砥石(戸石)崩れ」からの逃亡を小者の視点で描く。
著者等紹介
長谷川卓[ハセガワタク]
1949年、神奈川県小田原市生まれ。73年、早稲田大学大学院文学研究科“演劇専攻”修士課程修了。80年、「昼と夜」で群像新人文学賞を受賞。81年、「百舌が啼いてから」で芥川賞候補となる。2000年、『血路―南稜七ツ家秘録』で第2回角川春樹小説賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ポチ
47
戦いの描写は相変わらず、これでもかと細部にまでこだわっている。山の中を這いずり回り必死に戦っている姿をみて、嶽神伝の無坂を思い起こした。2018/01/28
baba
36
お気に入りの長谷川氏の新刊”小者の戦い”を楽しみに読んだ。始めの長閑な日常と朴訥とした会話の雰囲気が戦に出ることになり一変する。武田晴信の村上義清の砥石城侵攻、始めは戦場での暮らし向き、野外で暮らすことが伝わり興味深い。小者半助の主は徒士兵で命により城壁を登るが、知り人が次々に落下して絶命し嘆く中、何とか命をつなぐ。武将の物語でなく、名も無い個人が、虫けらのように命を失う。負け戦の殿で落ち武者狩りの追っ手を逃れて主を連れ帰る後半は辛く読み進められない。小者半助の思いに涙、涙、最後は余りに哀しい。2017/11/01
スー
19
57戸石城攻略に向かった横田高松に所属する雨宮佐兵衛と小者の半助の主従の物語。召集から行軍や戦陣での生活が詳しく書いてありとても興味深く読めました。当初は小笠原長時攻めで楽勝ムードが村上義清の隙を突き戸石城攻めをしてからは過酷な城攻めで半助は主の無事を祈りながら負傷者の救出に奔走するも事態は悪化、敗走する武田軍の為に横田隊は殿を務め部隊は四散、佐兵衛と半助の過酷な撤退が始まる。もう此処からは目が離せず緊張しっぱなしで最後は号泣でした。村上義清に絶賛された半助は本物の武士だ!なんて凄い本を読んだんだろう。2021/04/14
YONDA
17
武田晴信家臣・横田備中守の家臣の家臣の小者の話。華やかな戦とは程遠い小身の戦。戦場での小者たちの動きなど始めて読むので心ひかれる。そして戦に敗れ逃げ行く主従の凄絶な逃避行。敵方の追って、落武者狩りの百姓など簡単には帰れない。半助の様な小者がいて佐兵衞は果報者。ラストには不覚にも涙しました。2020/01/17
Bibliobibuli
13
戦国時代の小者の生き様を描いたものです。これまで武将を描いた小説しか読んでいませんでしたが、本小説は、小者たちが必死に戦っているのが、生々しく描かれていました。大変な時代だったのだなあと、改めて痛感しました。また、エンディングも、感動しました。2017/09/30