内容説明
敗戦ののち、めっきり家庭を顧なくなった夫を、三人の子どもとともに待ちながら暮らす妻のひとり語り「おさん」。他者へのサービスのために身をすり減らす未亡人の切迫した姿を描いた「饗応夫人」。そして、闇商売で荒稼ぎをしてきた雑誌編集者が、これからはまっとうに生きていこうと、絶世の美女を妻役に雇い、かつての愛人たちに別れを告げに歩く「グッド・バイ」(未完の遺作)など、全四篇を収録。太宰の晩年の気配が伝わってくる名作品集。
著者等紹介
太宰治[ダザイオサム]
1909年、青森県北津軽郡金木村(現五所川原市)に生まれる。本名津島修治。東京帝国大学文学部フランス学科中退。1935年「逆行」、1936年「晩年」が芥川賞候補となる。以後も「走れメロス」「ヴィヨンの妻」「斜陽」など精力的に執筆を続け人気を博すが、大学在学中より薬物中毒に悩み、自殺未遂を数回繰り返した。1948年、玉川上水に入水。満三十九歳の誕生日の早朝、遺体が発見される(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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鍵ちゃん
39
結核療養所で過ごす20歳の青年の手紙に自己を仮託し、明るい青春小説に仕上げた「バンドラの匣亅。不思議な響きのなかにあらゆるものを虚ろにしてしまう音を用いて、敗戦後の虚無的な精神状況を描き出した「トカトントン亅。新聞連載の予定で書き始められ、死の前日までに13回分で中絶した未完の「グッド・バイ亅ほか、5篇からなる短編集。自殺間際にしては明るく面白かった。表現も楽しかったが、隠れたところに狂気が見え隠れしていたな。2023/06/19
けぴ
36
『バイバイ、ブラックバード』(伊坂幸太郎)の元ネタとして、読んでみました。繭美と比べ、キヌ子はほっそりした絶世の美女。ただし怪力であることは共通する。続きが読みたい良いつかみだが未完作。残念2018/11/25
橘
21
面白かったです。太宰の、人を見つめる目は優しかったんだなと思いました。表題作が未完なのが残念です。2015/02/07
ゆるり
20
晩年の短編集4作。(戦後2年くらい) 映画観てたのにあらすじ忘れた未完の「グッバイ」だけちょっと走り読みするつもりが、うわあ!どっぷりと。妻目線の「おさん」と女中目線の「饗応夫人」が面白哀しかった。この語り部2人は現実的で、たくましいのだ。太宰と言っても、学生の頃に、人間失格と斜陽くらいしか読んだこと無かった…自己破滅型の私小説作家だったのね…。今村夏子や又吉に影響を与えたそう。たまには古典もいい。古く正しく美しい日本語に懐かしさを感ずる。2020/12/18
UC
18
積みから読了。『グッド・バイ』結構笑えました。太宰の作品で笑うとは思ってもみませんでした。というか、このお話未完なんですね。いよいよ盛り上がってきたというところでまさかの幕引き。うーむ、続きが読みたいなぁ。2016/06/22
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