内容説明
山奥に狩猟に出かけた二人の紳士が、空腹を満たそうと入った西洋料理店での身も凍る恐怖を描いた「注文の多い料理店」、谷川の底で蟹の兄弟が交わす会話と生命の巡りを豊かな感性で表現した「やまなし」をはじめ、「フランドン農学校の豚」「セロ弾きのゴーシュ」など全10篇を収録。賢治の優しさとセンスが溢れる名作アンソロジー。
著者等紹介
宮沢賢治[ミヤザワケンジ]
1896~1933年。岩手県花巻に生まれる。詩人、童話作家、法華経信者、化学者など多面的な活動をする。死後、評価や人気が高まり、その時代に応じ、さまざまに多義的な解釈がなされる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
(C17H26O4)
38
何度も読んだことのある『やまなし』。「日光の黄金は夢のように水の中に降ってきました。波から来る光の網が、底の白い磐の上でゆらゆらのびたりちぢんだりしました。」瞬間、眩しい光に包まれたようでうっとりしてしまいました。既読の童話もそうでないのもオノマトペやユーモアをゆったり味わいながら読みました。ですが、のどかな童話とみせかけてなかなかずしりときます。生命の尊さを深く考えましょう、と宿題をもらったような気持ちになりました。また、傲慢にならず慎み深くありなさい、と穏やかに諭されているようで心がしんとなりました。2018/03/21
koo*
14
『セロ弾きのゴーシュ』が読みたくて。心に残ったのは「ああかっこう。あのときはすまなかったなあ。おれは怒ったんじゃなかったんだ。」というゴーシュの台詞。それから『フランドン農学校の豚』から「けれども一体おれと葱と、何の関係があるだろう。」という豚の嘆き。某焼き鳥屋さんのカモネギになりに行く鴨を想い出してしまう。残酷だけど生に対して実直。2015/02/06
ひまわり
13
盛岡に行くにあたって,宮沢賢治の世界を予習。知っている話が多かったですが,今回は『フランドン農学校の豚』が一番心に残りました。2017/02/11
MATHILDA&LEON
12
宮沢作品は映像では観ていたが、本は初めて。どこか、訴えかけてくるものがあり、大人の為の切ない童話であった。生命の尊さを強く感じさせられるものばかりで、今こうして生きていることを改めて有難いと思う。その中でも「フランドン農学校の豚」「なめとこ山の熊」は心にズシンときた。2015/01/07
テツ
10
生物はお互いに食い食われ、生命の円環を成す。でもはたしてこの僕に他の生物の命を糧に生きるほどの価値があるんだろうか。そんなことまでしてこの僕の生命を繋ぐ意味が何処かにあるんだろうか。『よだかの星』をはじめとして全ての作品の根底に広がる、生命の円環の価値は認めながらも生きるということへの凄まじい虚しさ。そして自分という存在への諦観。生きることはとても悲しくとても虚しい。「ほんとうのさいわい」は何処にあるのでしょうか。2014/12/31