出版社内容情報
人はみな、未来に旅をする
『流星シネマ』『屋根裏のチェリー』
そして――。
静かに心が共振する、希望の物語。
僕は地元のラジオ局で深夜の番組を担当している。
ある日、17歳の時に絵のモデルをしたことを話したところ、
リスナーから、僕によく似た肖像画を見た、と葉書が届く――。
土曜日のハンバーガー、流星新聞、キッチンあおい、行方不明の少年、多々さん、鯨オーケストラ――すべてが響きあって、つながってゆく。
小さな奇跡の物語がここに終わり、ここから、また始まる。
内容説明
小さな奇跡の物語がここに終わり、ここから、また始まる。僕は地元のラジオ局で深夜の番組を担当している。ある日、17歳の時に絵のモデルをしたことを話したところ、リスナーから、僕によく似た肖像画を見た、と葉書が届く―。土曜日のハンバーガー、流星新聞、キッチンあおい、行方不明の少年、多々さん、鯨オーケストラ―すべてが響きあって、つながってゆく。
著者等紹介
吉田篤弘[ヨシダアツヒロ]
1962年東京都生まれ。小説を執筆するかたわら、クラフト・エヴィング商會名義による創作とデザインの仕事を手がけている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ちょろこ
139
安らぐ一冊。言葉と人との響き合い、過去からのつながりとこれからの始まりを描いた流星シネマ完結編は、どこかすぐそばに本当に存在するような町の営みの中に心を寄せられて、ハッとする数々の言葉が違和感なく水のように自然にスッと沁み込んでくる心安らぐ心地よさ。過去は時に人を縛り、時に背中を押すものなのかも。その過去をきちんと積み重ね向き合う大切さを感じ、物語の中の誰もの始まりの音を想像すると同時にちょっぴり淋しさも。「人は皆、未来に旅をする」なんて優しく背中を押す言葉だろう。まさに言葉が奏でる安らぎのメロディ物語。2023/04/30
けんとまん1007
127
本を手に取った瞬間から、吉田さんの世界が広がる。何故だろう・・と、いつも思う。本が醸し出す空気感なのかもしれない。手触り、重さ、装丁、文字のフォントなどなど。五感を総動員して読むのが、いつも。静かなな物語が紡がれているのも、いつものこと。人は、時間軸でも、空間軸でも、いろいろな人・場所と繋がっている。そして、迷いを持ちながら、1日1日を過ごしていくこと。その大切さを感じる。2023/05/18
シナモン
107
「流星シネマ」からつながる三部作の三作目。 迷い込んだ鯨、流された少年ー川の思い出を回収するように今までの登場人物たちがゆるやかにつながっていく。カチッとピースがはまるようなつながり、ちょっとのずれでつながらなかったつながり。さまざまな人間模様に人生の味わい深さを感じた。 やはり吉田篤弘さんの作品は自然に読むスピードが遅くなる。大事に大事に読みたくなる。静けさが本当に心地良い。2025/03/11
nico🐬波待ち中
89
『流星シネマ』『屋根裏のチェリー』に続く大好きなシリーズもいよいよこれで完結。お馴染みの人たちが徐々に繋がって、穏やかで優しい世界が広がっていく。相変わらず心に響くセリフが多くて何度も泣きそうになった。物語の展開に喜ぶ反面、これでみんなと会えなくなると思うととても寂しい。けれどこれは終わりではなく、新たな始まり。大好きな懐かしい人たちが、そっと静かに始める物語を噛みしめつつ、心地よい余韻にこのままいつまでも浸っていたい。やっぱりこの世界観が好き。後日談でもいいのでみんなのその後の物語もぜひ描いてほしい。2023/04/15
Ikutan
83
時間は過ぎていくのではなく、その人の中で積み重なっていくんです。深夜ラジオがきっかけで17歳の頃の記憶を呼び戻された曽我哲生。一枚の絵から繋がっていくそんな彼の不思議な出会いの物語。流星新聞の編集者太郎君。オーボエ奏者のサユリさん。詩集をつくるカナさん…。『流星シネマ』と『屋根裏のチェリー』でお馴染みの人たちの登場に心が躍る。サラサラと川のように流れる吉田さんの文章は、透明感のある独特な世界に一気に引き込んでくれる。物語の背後に浮かぶのは悠然と泳ぐクジラ。読後は『G線上のアリア』を聴いて暫く余韻に浸った。2023/04/29