出版社内容情報
吉川元春に拾われ、騎馬遊撃隊を率いるようになった少年・小六。
尼子再興を願う猛将・山中幸盛(鹿之助)。それぞれが異なる強さを求め、あがき、抗う――。
毛利対尼子、熾烈なる最後の戦い。 第13回角川春樹小説賞受賞作続篇、誕生。
《物語は疾風迅雷、風のように駆けてゆく。その中で絶妙なのが、両者を相対的に捉え、それぞれの正義を描いている点であろう。
二人共に感情移入が出来るから、読者は引き裂かれそうになりつつも、ページを繰る手を止められなくなるのだ。
読者は作者の術中にはまり、逃れる事は出来ない。あとは一気読みだ。そしてラスト――。
書きたいがこれ以上は書けない。稲田幸久の第二作は、決して読者の期待を裏切ることはない。》
――文芸評論家・縄田一男。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しんごろ
165
それぞれが、背負っているものがある。譲れない思いがある。思いがあるから負けられない。俺が俺であるために負けられない。だから戦うのだ。皆、なんて熱いんだ。小六に吉川元春、尼子勝久、山中幸盛、浅川勝義…、人を並べたらキリがない。とにかく皆が熱いのだ。そこには、誰が主人公なのかは、どうでもいい。ありったけの思いをぶつけ、未来へ向けた負けられない戦いに、涙が溢れてきた。毛利対尼子の熾烈な最後の戦い、しかと見届けた。おまえ達は、間違いなく漢だ。皆、大義である。あっぱれだ。2023/02/16
たいぱぱ
61
素晴らしい!惜しいと感じたデビュー作の続編は「惜しい」なんて微塵も感じさせない圧倒的感動を頂いた。続編ではなく2冊で1つの作品だと思う。吉川-You gotta chance-元春と山中鹿之助幸盛。2人の漢が激突する上月城でのクライマックスには涙してしまった。毛利と尼子を超えた1人の漢同士の決闘。それでいて1人ではなくたくさんの人達の想いを背負ってる物語にも涙。2人の妻、芳乃も綾もとてもとてもかっこよかった。何も成し遂げられなくても、懸命に駆け抜けると誰かの心に何かを刻むことができる。その通りだと思う。2022/10/17
ポチ
41
クライマックスの上月城の戦いに向かうにつれ気持ちの昂ぶりが抑えられなくなる。感動の涙と共に本を閉じる。2023/05/03
wasabi
21
尼子再興の戦いを情感たっぷりに描かれる。なにせ鹿之助の末期は揺るぎなく、ことに上月城において信長に捨て置かれ、孤立無援に陥って無念の死を迎える。さすがに歴史に語られるよりも華やかに散ったが、願う出雲への道のりはあまりに遠かった。地元を舞台にした小説であり、郷土史をおさらいする意味でも楽しく読ませていただいた。ただ、少年騎馬遊撃隊を主軸にした物語であるものの、小六の描写については半端感が否めず。創作人物にして扱いは難しく、華々しい戦果も与えられないとはいえ、最期があまりに物足りない。主人公だと思うんだけど。2022/07/19
二分五厘
20
毛利対尼子再興軍の戦いに介入してくる大きな勢力・織田信長。権謀術数が入り乱れる戦国の世、東から襲い来る脅威に両陣営は……。「出雲に帰ろう!」結末を知ってしまっている者には、上月に入城した時点で切羽詰まったと感じてしまうが、彼等の意気は高い。自分の夢を再確認した上で、騎馬隊を最高の形で昇華させるべく最後の決戦に挑む小六。かたや尼子軍全ての命をその双肩に受け、その名を残すために最期の決戦にかける幸盛。この巻の主人公はやはり○○だよなぁ。痺れるほど溢れるほどに格好いい。2024/07/16