内容説明
文学研究の視点から『吾妻鏡』の歴史叙述を読み解く。『吾妻鏡』は、鎌倉時代の東国を活写する稀有な史料であり、また幕府を支えた家々の勲功譚の集合体でもある。しかし、政治的意図をもって編纂された『吾妻鏡』の記述は、単なる事実の記録ではなく、過去を語り直そうとする歴史叙述として読み直されねばならない。どのような構想と方法で幕府の“歴史”を構築しているのか。巧妙に織りなされた文脈を読み解くことにより、合戦叙述を軸に忠臣たちの活躍と神仏の加護を描いて頼朝・泰時・時頼の絶対性を語る、軍記物語としての相貌を明らかにする。
目次
『吾妻鏡』と“歴史”の構築
1 頼朝と忠臣たちの関東草創(令旨到来―冒頭部の構成とレトリック;関東草創―頼朝の貴種流離譚と忠臣たち;「貴種流離譚」とは何か―利己と歓待の文学史;野木宮合戦―北関東支配の起源;奥州合戦―奥州支配の起源)
2 北条得宗家による政道継承(和田合戦―実朝と泰時の政道継承;実朝暗殺―『吾妻鏡』の編集方法と成立背景;承久の乱―盟主泰時の誕生;承久の乱はいかに語られてきたか―過去像の変容と更新;宝治合戦―家々の“歴史”の交差点)
『吾妻鏡』後半の歴史叙述
著者等紹介
藪本勝治[ヤブモトカツハル]
1983年山口県宇部市生まれ。現在、灘中学校・高等学校教諭(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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