出版社内容情報
三島由紀夫の文学の最も内奥に秘められた彼の「詩」の問題について、少年時の詩作、『詩を書く少年』『海と夕焼』『午後の曳航』『仮面の告白』などの作品群を『豊饒の海』とも関連づけながら論じた「三島由紀夫の詩―ニセモノの詩人から小説家へ―」では、天才少年詩人が自身の贋物性に気づき覚醒することが小説家の誕生を促したことを人間と言葉の関係という観点からとりくむ。彼の作家と人間としての運命が語られている『近代能楽集』所収の八作品全てを能(謡曲)の翻案の方法を探るという基本姿勢を崩さず詳述。研究の遅れていた『熊野』『道成寺』にも正面からとりくみ、『近代能』には能そのものを現代に再生させようと意図した作品と原曲とは異なる現代的主題を扱った「能ばなれ」の作品とに大別する。『卒塔婆小町』『葵上』など前者は「閉じられた」構造を持ち、『熊野』『弱法師』など後者は作品が日常世界に「開かれ」て終るが、両者は三島の芸術と人生の運命を示すとする、など三島研究を画す作。
目次
一 三島由紀夫の詩 三島由紀夫の初期世界の考察―ニセモノの詩人から小説家へ―/二 三島由紀夫の劇―『近代能楽集』論― 1『邯鄲』論―花ざかりの悟り―/2『綾の鼓』論―輪廻転生する恋―/3『卒塔婆小町』論―輪廻転生するロマンと仏法の永遠―/4『葵上』論―あらかじめ失われた恋―/5『班女』論―正気の果ての狂気―/6『道成寺』論―意識の檻から日常へ―/7『熊野』論―「花」は権勢に抱かれる―/8『弱法師』論―閉ざされた詩の終焉…―/随想「道成寺」拝見/あとがき/初出一覧
内容説明
三島文学の最奥の謎を解く鍵は「詩」である。「ニセモノの詩人」はいかにして小説家になったのか。“三島由紀夫の詩”と今まであまり論じられなかった『道成寺』『熊野』をはじめ八作品すべてについて、能の原曲との関連を基にして論じた『近代能楽集』論。
目次
1 三島由紀夫の詩(三島由紀夫の初期世界の考察―ニセモノの詩人から小説家へ)
2 三島由紀夫の劇―『近代能楽集』論(『邯鄲』論―花ざかりの悟り;『綾の鼓』論―輪廻転生する恋;『卒塔婆小町』論―輪廻転生するロマンと仏法の永遠;『葵上』論―あらかじめ失われた恋;『班女』論―正気の果ての狂気;『道成寺』論―意識の檻から日常へ;『熊野』論―「花」は権勢に抱かれる;『弱法師』論―閉ざされた詩の終焉…)
随想「道成寺」拝見
著者等紹介
高橋和幸[タカハシカズユキ]
昭和25年(1950年)愛媛県生まれ。関西学院大学文学部卒。同大学院文学研究科博士後期課程単位取得により退学。同大学教学補佐、樟蔭女子短期大学を経て、大阪樟蔭女子大学助教授。美学に基づいて三島文学などの近代文学、能を中心に研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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