内容説明
源信の『往生要集』が日本人の地獄思想の形成に多大な影響を与えた事は、思想史において常識である。しかしながら、『往生要集』が書かれた平安時代、西暦九八五年から千年以上の時間の経過の中で、源信が『往生要集』によって伝えようとしたメッセージ、つまり、末法時における阿弥陀信仰の重要性と極楽往生のための修行方法というメッセージが、不変のまま現代の日本人に受け入れられているわけではない。また一方で『往生要集』は、写本、版本、等が非常に多いという特色を持っている。周知のように、『往生要集』の原本は失われているのだが、漢文の写本、版本をはじめ、仮名書き本、仮名書き絵入り本など、様々な形態の『往生要集』が残されている。つまり『往生要集』は、受容者の知識や要求に対応して様々に形態を変化させ、今日まで伝えられ、日本人の地獄観や他界観に多大な影響を与えて来たのである。
目次
第1篇 『往生要集絵巻』と『往生要集』(構成からみた『往生要集絵巻』と『往生要集』;『往生要集絵巻』と『往生要集』の記事内容の比較;『往生要集絵巻』の訳述方式と「仮名書き往生要集」の訳文 ほか)
第2篇 『往生要集絵巻』の絵と詞章(地獄;餓鬼道、畜生道、修羅道、人道、天道(地獄を除く六道)
極楽の十楽)
第3篇 『往生要集絵巻』詞章の言語的性格(表記形式について;用字について;表記における問題点 ほか)