出版社内容情報
20世紀を代表する映画というメディアについて、国籍・演出・歴史の3つの指標を通じて、その位置を明らかにする、蓮實重彦、待望の最新映画講義録。
内容説明
「複製の誘惑」に、涙とともに目覚めるために21世紀最初の映画論。文化にとどまらず政治的にも大きな役割を果たしてきた映画に、それにふさわしい視線を送り、その20世紀的な役割と機能を自覚すること。映画、歴史、そして混迷する国際社会への真の理解は、ここから始まる。
目次
第1章 映画における国籍(国籍という概念、その脆さ;「日本映画」の揺らぎ;成瀬巳喜男『鶴八鶴次郎』における翻案 ほか)
第2章 映画における演出(映画は「男と女と階段」で成立する;単純なショットの組み合わせ;階段の意味するもの ほか)
第3章 映画における歴史(ゴダールの『映画史』―女性たちへの視線;『映画史』の断片を持続によって回復する試み;ゴダールとミュージカル ほか)
著者等紹介
蓮実重彦[ハスミシゲヒコ]
1936年東京生まれ。映画評論家・フランス文学者。1997‐2001年、東京大学総長。1999年フランス政府「芸術文化勲章」を受賞。海外の映画祭で鈴木清順(1991、ロッテルダム映画祭)、加藤泰(1997、ロカルノ映画祭)、成瀬巳喜男(1998、サン・セバスチアン映画祭)等の特集上映、小津安二郎生誕100年記念シンポジウム(2003、東京)などにかかわり、ロカルノ、ヴェネツィア等の映画祭では審査員をつとめる
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感想・レビュー
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狭山山広
3
サイレント時代の監督の方がカメラの置く位置をキチンとわかってた、トーキー以降の監督は、スコセッシやスピルバーグ、黒澤明ですらカメラの位置はサイレント時代の監督ほどは分かっていない(言い回しはだいぶ間違ってるかも)。てなことが書いてあったがそのへんをもっと詳しく知りたいよ。2020/11/02
NN
2
『汚名』を題材にしながら映画における演出を語っている第2章がめちゃくちゃ面白かった。2020/05/10
dubstepwasted
0
『脂肪の塊』のあらゆる翻案が映画作家を嫉妬に狂わせるわけではありません。それこそが、模倣が差異を生産する映画のつきぬ魅力にほかなりません。(p.58)/映画はもっと単純なものであって、「男と女と階段」があればいいんだということ、そして「階段」の代わりに何か他のものを考えていけばいいのです。いったい階段の他にどんなものがあるだろうかと考えることで、映画が始まります。(p.113)2016/01/14
uchiyama
0
改めて読み返してもとても面白くて、今の状況を考えると憂鬱になるのですが、映画のことで涙したり、憂鬱になったりする権利は自分にはないな、とも思わせられる本です。2021/08/26