内容説明
健全なる肉体に宿った精神の不健全…美容整形から反エイズ広告まで、二つの世紀末を冒す表象の病魔の徘徊を斬る。
目次
第1章 医学史の記述はイメージを使わず、イメージを無視してきた
第2章 テスト・ケースとしてふたたび狂気をとりあげる―精視医学的イメージと多重・同時併存的な意味
第3章 醜いものと美しいもの―性の医学的文化、その通文化的な規範と定義
第4章 オペラ座の怪人の鼻
第5章 マーク・トゥエイン、聖地、そしてヒステリー
第6章 美しい身体とエイズ―20世紀末、危機にある身体のイメージ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ルートビッチ先輩
3
健康(=美)、病(=醜)という差異を用いて他者を作り出すとき、18世紀以降の視覚偏重文化は図像を用いた。それら図像を無視してきた医学史に対する批判がまずある。そしてそれに挑む著者は上のような図式でイメージが作り出されてきたこと、そしてそれに囚われてきたことを説く。また美はエロティックなものと結びついている(病の身体は性欲を惹起しない)と考えられてきたが、そのときエイズという性病に関わる20世紀のイメージもまた美と醜の規範に支配されており、そこで死のイメージが喪失されてしまっていることを問題とする。2015/01/27