出版社内容情報
一七世紀の初頭に刊行され、以降の芸術に大きな影響を及ぼした『イコノロジーア』を、バロック芸術の興隆と展開の中に解き明かす!チェーザレ・リーパの寓意表象の集大成『イコノロジーア』は、一七世紀以降の芸術、とくに美術に大きな影響を及ぼした。たとえば、ヨハネス・フェルメールの最晩年の作品《信仰の寓意》は、ディルク・ピーテレスゾーン・ペルスが編纂し、一六四四年にアムステルダムスで刊行した、チェーザレ・リーパ『イコノロジーア』のオランダ語版における〈信仰〉の記述に依拠している。「〈信仰〉はまた、座っており、きわめて注意深く見える女性によって表わされる。彼女は右手に聖杯をもち、左手は一冊の本の上に置いており、この本は、キリストを意味する堅固な隅石の上にある。彼女は両足の下に世界を踏みつけている。彼女は上着の下に、深紅の衣服をまとっている。その隅石の下には、押しつぶされた蛇が横たわり、そして〈死〉が折れた矢をたずさえている。そこには、原罪を引き起こした林檎が置かれている」。フェルメールの絵画のタイトルに登場している「寓意」という観念は、チェーザレ・リーパの『イコノロジーア』が、この「寓意の時代」を表現する、ひとつの「寓意」であった。
プロローグ 寓意の世紀──『イコノロジーア』の成立
? 『イコノロジーア』の歴史的背景
1 古代における寓意と擬人像
2 中世における寓意と擬人像
3 ルネサンスにおける寓意と擬人像
? 『イコノロジーア』の世界
1 チェーザレ・リーパの生涯と著作
2 『イコノロジーア』の思想と構成
3 『イコノロジーア』の諸版と翻訳
? 『イコノロジーア』と古典古代の伝統
1 古典古代の作品の受容
2 神話の集成と解釈
3 ヒエログリフ、メダル、エンブレム
エピローグ 寓意の時代──『イコノロジーア』の影響
註
文献一覧
人名/書名/作品名 索引
伊藤博明[]
石井朗[]