内容説明
銀河の果てフィリドール系の辺境にある惑星マルモラ。後に宇宙最強の殺し屋メタ・バロンの一族を輩出することになる惑星である。人々が慎ましやかながら幸福に暮らすこの地から、ある日、貴重な反重力物質が産出されることが判明し、帝国中の貪欲な輩が殺到することになる。その有事に際し、統治者ベラール・ド・カスタカ男爵は、家族たちに知られざる一族の歴史を語って聞かせる。それは名誉を守るためであれば、自らを犠牲にすることすらいとわない戦士一族の波乱の物語だった。ホドロフスキー&ヒメネス『メタ・バロンの一族』に連なる戦士の血脈。ホドロフスキーの武士道愛が余すところなく吐露された壮大な宇宙叙事詩!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Vakira
26
ホドロフスキー原作のBD(バンドデシネ)本。「アンカル」から読むはずだったが、ペラペラめくっていたらもうそのまんま読んでしまった。114ページしかありませんが、1本のSF映画を見たような昂揚感。小さな星での2の民族の争い。鎧を着た戦士達、旗を立てビジュアル的にも、自分の一族の子孫を残すことに傾注する様もまるで日本の戦国時代のようだ。どんな展開かと言うと「まずは愛し合い それから殺し合おうとしよう」に尽きる。相手が敵であってもまずは子孫を残さなければならない。最重要事項は愛ではなく一族の命を繋ぐこと。2017/12/29
allite510@Lamb & Wool
7
何も言い得ていないことはわかっているが、ホドロフスキーはやはりおかしい、とは言っておきたい。「宇宙を舞台に展開する中世的野蛮」とまとめると陳腐な感じだが、異様な生死観と暴力性には奇妙な迫力がある。ホドロフスキーが今のCG技術を駆使したら一体どのような作品を作るのか見てみたいような気もするが、絵コンテくらいで止めておく方がより面白いような気もする。ダス・パストラスの解剖学的な正確さを感じさせる硬質な絵も、日本のマンガが長年培ってきた魅力の数々からあまりに遠く離れていて、一周まわって新鮮。2019/05/28
udonkusoyarou
3
「メタ・バロンの一族」で描かれた宇宙最強の血族。その血塗られた系譜の、さらなる源流を辿る一冊。ホドロフスキー的東洋思想(ヘンテコ武士道)と高度宇宙文明がいびつに混在する世界。強烈な男性性ほとばしる主人公カスタカは、己の矜恃だけを神明とし、巨大な宇宙を駆け強大な敵を打ち砕く。短編的分量ながら、息もつかせぬストーリー展開は(悪く言うと場当たり的)毎度の事ながら、なぜか引き込まれてしまう。宇宙戦艦や合戦場面の作画の緻密さ。これ見るだけでも2000円出す価値あんぞ‼︎2015/06/04
籠り虚院蝉
1
『メタ・バロンの一族』と『L'INCAL』は未読。しかし、とても濃密なスペースオペラで終始圧倒されるばかり。一時はしきたりに苛まれ、出生の裏切りを経験し、身勝手に振舞う運命を己の強靭な武をもって跳ね除けるカスタカ男爵の生き方は、端的に恐ろしいと言わざるを得ない。こんな生き方を継承している宇宙最強の殺し屋「メタ・バロンの一族」とは……本編を読んでいないので彼らがどんな存在なのか具体的なことはわからないが、この予備知識をもって早く既刊シリーズも買って読まねば。2015/11/17
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