目次
第1部 イギリス一九世紀末小説の怪物たち(大英帝国の陰り;退行していくイギリス人種―『タイム・マシン』と『モロー博士の島』;子孫を残さぬ男たち―『ジキル博士とハイド氏』と『ドリアン・グレイの肖像』 ほか)
第2部 赤ずきんちゃんの誘惑(アンジェラ・カーター作『血染めの部屋』について;おとぎ話「赤ずきんちゃん」の変遷;カーターの「赤ずきんちゃん」の書き換えの功績 ほか)
第3部 ハリー・ポッターのイギリス(『ハリー・ポッター』と現代イギリス社会における人種問題;『ハリー・ポッター』と現代イギリス社会における階級問題と政治;『ハリー・ポッター』と現代イギリス社会のジェンダー観)
著者等紹介
坂田薫子[サカタカオルコ]
日本女子大学大学院文学研究科博士課程後期単位取得満期退学。現在、日本女子大学文学部英文学科教授。英文学専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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田中峰和
7
タイトルから連想させるお遊び要素は皆無で、19世紀イギリスに誕生した怪物的存在を描いた小説を分析する真面目な学術書。「ドラキュラ」や「ジキル博士とハイド氏」は、大英帝国の陰りがもたらした社会不安を描いているというのが著者の分析だ。植民地の反乱、製造業における米国の優位などで、当時の英国は焦っていた。さらにダーウィンによる進化論は、やがて進化の階段を後退していき、獣に先祖返りする悲観論まで生み出した。先の両作品で描かれる怪物こそ、その獣性を象徴している。「赤ずきんちゃん」がレイプ犯を誘惑する分析も面白い。2019/09/21