内容説明
グローバル資本の最大の犠牲者=抵抗者。経済発展を謳歌するインドで、掃討すべき「脅威」と名指させる「毛派」とはどんな人びとなのか。インドの世界的女性作家が、生きのびるために銃をとった子どもたち、女性たちと寝食、行軍をともにし、かれらが守り守られる森のなかに、グローバル資本から逃れ出る未来を構想する。
目次
チダンバラム氏の戦争
同志たちと歩く
トリクルダウンの革命
著者等紹介
ロイ,アルンダティ[ロイ,アルンダティ] [Roy,Arundhati]
作家。ニューデリー在住。1997年に長編小説『小さきものたちの神』(DHC、1998年)でブッカー賞受賞
粟飯原文子[アイハラアヤコ]
ロンドン大学東洋アフリカ研究学院博士課程。神奈川大学外国語学部非常勤講師。専攻はアフリカ文学・文化研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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よきし
7
経済成長が続くインドで、「先住民」が多く住む中央部で資源開発などの目的で先住民の強制移住や虐殺が行われている。同様に周辺の貧困カーストへの包囲殲滅戦が軍警察民兵による超法規的暴力によって継続的に行われている現状を、それと対抗する共産党毛沢東派ゲリラの活動に内部取材しながら書かれた本。ジェノサイド条約が規定し移行期正義の前提となっていた「民主政権は虐殺を行わない」がいかに幻想であり、新自由主義のもとではむしろ暴力と排除こそが正当な手法であることを改めて突きつける。まったく知らなかったインドの重要な側面。2022/02/03
yooou
6
☆☆☆☆★ 敬愛するロイの新作ルポ。ここで登場するゲリラとは無意味に暴力的で血に飢えているとされている毛沢東主義の過激派ゲリラの事。彼女はなんと彼らに合流して森で暮らした。そこで浮かび上がる企業と国家の欺瞞と先住民族たちが騙され残酷な仕打ち。しかもそれは未だ止む気配すらなく続いているのだった。2013/09/23
Sanchai
5
首都で発信される情報ではなかなか実態が捉えられていない東部山岳地帯の反政府運動について、政府が行う掃討作戦がかえって反政府活動を増殖させてしまう構図を描き、実際のゲリラの行軍に同行してその実態を文章として広く知らせるルポ。著者の立場はゲリラ寄りだが、暴力に対して暴力で応じることには否定的で、問題解決に向けた明確な選択肢は描かれていないけれども、こうした実態をインド国内外に知らせることが自分の役目だとわきまえて書かれていると思う。インドを知る上では押さえておくべき良書。2015/11/05
BLACK無糖好き
5
3,300もの巨大ダム、鉄鋼工場、アルミニウム精錬所、農村部の赤貧、進む飢餓、洪水や干ばつ等によってインドでは6,000万人以上が移動を強いられている。インド中央のジャングルを拠点に絶対的権力に抗う「毛沢東主義」ゲリラの活動を著者は実際に行動を共にしながら描写し彼彼女らの素顔にも迫る。「市場原理」に基づいて「迅速かつ効率的に」資源を採掘するなんてことは植民地主義者が植民地で行ったこと、それは成長と発展の定式であるが、他のだれかのためのもの(p174)。この構図は地球規模での深刻な人権・環境問題であろう。2015/05/23
カネコ
4
◎2014/06/27