内容説明
光と影が渦巻く大都市ソウル。最低賃金のバイトをしながら、くずみたいな文章を書きなぐって暮らす“俺”は、どれだけ派手に遊んでも、消せない孤独を抱えている。そんな日々のなか、梨泰院のクラブでバーテンダーとして働くギュホと出会い、愛を分かちあう。しかし“俺”には、人に言えない“秘密”がある…。(「大都会の愛し方」)喧騒と寂しさにあふれる大都会で繰り広げられる多様な愛の形。さまざまに交差する出会いと別れを切なく軽快に描く。韓国で新時代の文学として大きな話題を呼んだベストセラー連作小説。
著者等紹介
パクサンヨン[パクサンヨン]
朴相映。1988年、韓国・大邱(テグ)生まれ。2016年「パリス・ヒルトンを探してます」で文学トンネ新人賞を受賞し作家活動を始める。「メバル一切れ宇宙の味」(本書収録)で2019年若い作家賞大賞を受賞するなど、早くも2020年代を代表する新しい韓国文学の“顔”、最も将来が期待される作家の一人と位置づけられている。著書に短編集『知られざる芸術家の涙とザイトゥーンパスタ』(第11回ホ・ギュン文学作家賞受賞、2018年)
オヨンア[オヨンア]
呉永雅。翻訳家。在日コリアン三世。慶應義塾大学卒業。梨花女子大通訳翻訳大学院博士課程修了。2007年、第7回韓国文学翻訳新人賞受賞。梨花女子大通訳翻訳大学院講師、韓国文学翻訳院翻訳アカデミー教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
M H
28
都市に生きる同性愛者の男性を語り手に孤独、喪失が刺さる4編の連作。気の合う女友達、愛した人、親。みんな通り過ぎていく。その寂しさに、軽いノリの語り口でもどんどん胸を締め付けられた。誰かを求めるほど、失ったときの傷は深くなる。理解してもらえなくても、それでも求め続けるのだろう。生き辛さに折り合いがつく日が来ることを祈る。2021/02/17
星落秋風五丈原
20
大都会で暮らす男性作家の4つの愛の物語。2020/12/06
torami
19
クィア文学と位置づけられた作品。 ついうっかり「まるで"普通の"カップルの話を読んでるみたい」と書いてしまいそうになる。そして、普通にいい恋愛小説だと思う、普通に。ここを考えだすと途端に感想を書きづらくなる。 こうした問題意識はとりあえず置いておいて、『メバル一切れ宇宙の味』が好き。恋をした時の世界の見え方がくっきりと描かれていた。恋愛の醜さと美しさが渾然とした様を味わえるのは、日本に紹介される韓国文学の一つの共通点だと思う。2021/03/21
ズー
17
主人公の心の中の声がやたら多く、その語りが魅力的。短編っぽい作りではあるものの、一貫して主人公は変わらず、現在 過去に戻りながらその頃の思い出を振り返る。時に別人?て時もある。一緒にいる人によってキャラが変わったりするのが、人として妙にリアル。楽しそうだし、幸せそうだし、かわいかったりもするけれど、ゲイとしての生きることで受ける差別など。悲しいと泣くのではなく笑ってしまう、そんな主人公のような話。特別視されることなく、愛を自由に生きられる世の中になれと思うばかり。2021/07/08
二人娘の父
15
韓国文学のなかでも「異色」と言われるのだろうか。クィア文学という呼び方もあることを初めて知る。私にはとても熱烈な恋愛小説にも読めた。自己認識としては異性愛者である自分には、同性愛者間の恋愛感情にここまでリアルに触れるのは初めてだったが、あまり違和感はなかったように思う。同時に「カイリー持ち」などの用語もあるように、その世界特有の問題や課題もあるのだろう。新しい世界を垣間見たというのが率直な感想だ。著者あとがきでの決意が、心に響いた。2021/11/10