内容説明
男性中心に作られるジャーナリズムの「ふつう」は社会の実像とズレている。メディアが世界を映す鏡なら、女性の「ふつう」も、マイノリティの「ふつう」も映してほしい。女たちが考える“みんな”のためのジャーナリズム。
目次
「女性メディア研究者」の居場所探し―MeDi(メディア表現とダイバーシティを抜本的に検討する会)発足に至るまで
「女子アナ」から考察する日本社会―メディアと権力とジェンダーの関係について
つながることで変わること―女性ジャーナリスト勉強会の20年
特別対談01 ブルボンヌさん、どうして女装するのですか?
炎上の影に「働き方」あり!―メディアの働き方改革と表現を考える
ジェンダー炎上する広告やCM―市民は何に怒っているのか
ネットミソジニー―行き場のない憎しみが女性たちに向かっている
特別対談02 伊東さん、なぜ企業にとってダイバーシティは成長戦略の一つなのですか?
「殻」を破ろうとする韓国の女性たち―消される「声」に抗して
パーソナルな思い出と、フェミニズムについてのブックガイドのようなもの
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
とよぽん
36
法律や制度は国が作る。しかし、それだけでは働き方やセクハラ問題は一向に変わらない。偏った(歪んだ)社会の風土や文化を変えない限りは・・・。それを変えるのはメディアだ。と力説する執筆陣。メディアの影響力は大きいけれども、その世界は政治の世界以上に未だに男性中心であり、もっと多様性を許容するメディアにしていくことが必要だ。メディアとジェンダーの今日的な問題を熱く語った本。特別対談3つも濃い内容だった。特にブルボンヌさんの話が印象に残った。2020/03/15
katoyann
26
メディアとジェンダーをテーマにした論文やエッセイ、対談から構成された書物。炎上CMが生まれる仕組みやオンラインハラスメントの問題など、最新のメディア環境と女性の問題が取り上げられている。例えば、#Me Too運動の広がりについては、韓国と日本では違いがあり、韓国は、性暴力被害の告発に対する支持の輪が広がったのに対して、日本では、伊藤詩織の被害事件の報道にも「自主規制」をかけてしまい、広がりを欠いた。「声を上げる女性」をターゲットにして、男性が嫌がらせを続けるのが目立つ社会。眩暈がするほど気色悪い。2022/09/30
kana
22
章ごとに筆者が変わっていくため、スラスラ読める所とそうではない部分があった。単純にその内容に触れたことがあるか、そうではなかったかの違いとも言える。女性がマスコミで働くことの困難さ、過酷さを実感させられた。また、声を上げる女性に対して、匿名性を利用し誹謗中傷をする人がいるという現実は物凄く苦しいし、悔しい。関連本も随時読むことで、知ること、考えることは諦めないでいたい。2020/09/13
はるき
16
同じ人間がいないように、人それぞれに考え方感じ方がある。至極当然なのに、忘れてしまいそうな自分にヒヤリ。ジェンダーの話とはつまり人権の話であり、知らない分からない興味がないとか言ってる場合ではないのだ。わかり易さを一旦置く必要がある気がする。人間は複雑だから、ステレオタイプの罠にご用心、ご用心。2024/02/06
チェアー
14
女性を差別する側の人はもちろん、一見女性に理解があるように見える人にも、問題はひそんでいるのではないか。どちらも「女性だから」という言葉の前に、自分の頭で考えることなく、対応してしまうという共通点がある。思い込みやレッテルを排し、正しく人間として向かい合う。ああ、なんてきれいな言葉で難しいことなんだろう。自分は他人を踏みつけていないか、を常に考えること。そして、自分はそもそもなんなんだと考えること。それが「足をどかせる」ことにつながるのではないか。2020/02/26