内容説明
キャロルの手紙や日記、歴史資料や学問的解釈etc…を駆使して付けられた、300以上の注釈を収録。これまで世界中の画家が描いてきた100枚以上の「アリス」挿絵を精選収録。公刊された「アリス」からは削除された幻の「かつらをかぶった雀蜂」挿話を復元収録。テニエルの貴重な鉛筆ラフスケッチも収録。
目次
『詳注アリス』序文
『新注アリス』序文
『詳注アリス決定版』序文
『ナイト・レター』誌詳注への序文
『詳注アリス完全決定版』への序文
不思議の国のアリス
鏡の国のアリス
かつらをかぶった雀蜂
著者等紹介
ガードナー,マーティン[ガードナー,マーティン] [Gardner,Martin]
1914年アメリカ・オクラホマ生まれ。2010年没。批評家、数学者、サイエンス・ライター。ルイス・キャロルとその作品に関する世界有数の専門家。これまで100冊以上の著書をあらわしている
高山宏[タカヤマヒロシ]
1947年岩手県生まれ。批評家、翻訳家。大妻女子大学比較文化学部長を経て、同大学副学長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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コニコ@共楽
14
『鏡の国のアリス』を中心に読んでみた。まるで日本の古典の注釈書のようだ。『桃尻語訳 枕草子』みたいに註釈の方が多いほど。原文訳文を読みながら、キャロルの心情や当時の考え方などを偏りなく解説している。時々、数学的な解説に頭がついていかなかったが、ナンセンスの謎が少しわかって楽しい。テニエルの挿絵の言及もキャロルと意見が合わなかったなど凝り性の二人が目に浮かんだ。チェスの棋譜も一番わかりやすい。2025/04/03
rinakko
7
久しぶしにアリスを読み返したくなり、未読のこちらにしたら大満足の読み応えだった。アリスの詳注本を出すと、無数の研究熱心な読者から新しい注の提案や訂正が届き、それらによって「詳注アリス」はパリンプセストだった…という話も好きだ。そうして膨大になった注の中には、敢えてミニ・エッセーのように少しく逸脱して書かれたものもあり、注釈者の思い入れや拘りが伝わってくる。リドゥル姉妹やテニエルのエピソード、私的ジョーク、ヴィクトリア朝の習俗について、チェスの展開に合わせた解釈…などなど、たっぷり詰まっていて頗る楽しかった2025/04/08
roughfractus02
7
音声的言い回しや文字の組み替えや他のテクストをパロディ化する逸脱的な本文から成る2つの「アリス」は、一方で<出発-冒険-帰還>の定番物語に収まる。馴染みの物語パターンは各国語への翻訳を促し、英語本文の逸脱は他言語でその度合いを増す。本書を何度も注釈したガードナーはキャロルに関する自著への読者の感想まで注に忍ばせ、複数言語を並べてジャパウォッキーの詩を長々と注釈する。テニエルら挿絵画家の同じ場面の画の中に伝統的な仕草の図が紛れ混む。「アリス」を何度も訳し直した高山宏の邦訳は、翻訳自体が注釈なのだと主張する。2020/10/11
ねむ
6
注釈本は初挑戦。図書館閉鎖前に借りて、ほぼ2か月かけてじりじりと読破しました。これは本来、買わないと読み切れない本です。アリスは子供の頃に好きだったな、ぐらいの軽い気持ちで読み始めましたが、途中からもう作者との意地の張り合い(?)みたいな感じに。ヴィクトリア朝の英語の使われ方やら社会状況やら、いろいろ勉強になりました(ほとんど忘れていくと思うけれど)。詩の翻訳って大変そうだなあと前々から思っていたけれど、アリスに関しては五重苦ぐらいの労力なのだとわかりました・・・。ほんとにこれは大変な訳業!2020/05/28
はにまる
2
本編よりも膨大な量の注釈に度肝を抜かれる、マーティン・ガードナーによる注釈付きアリス。自分が以前読んだのは1980年の東京図書版だったが、ガードナーは1960年の初版から2010年に亡くなる直前まで注釈をアップデートし続け、死後完全版として出版されたのが本書。ガードナー本人だけでなく、キャロル&アリス研究家たちの様々な解釈を盛り込んだ大作。タイポグラフィで有名なネズミの尾はなしの新しい解釈だとか、ナンセンス詩「ジャバウォッキーの詩」の詳細解説とか、興味深い考察が多数。正に"考察が捗る"アリスの決定版。2021/07/29