内容説明
「性」は、なぜこれほどまでにタブー視されるのか?気鋭の法学者が、性表現規制の東西の歴史を読みとき、その背後にある政治力学を鮮やかに描き出す、必読文献!
目次
第1章(基礎編) 「猥褻」とはそもそも何なのか
第2章(歴史編) 「性」の比較社会論
第3章(近代史編) 市民社会と道徳
第4章(法制史編) 「えっちな表現」はいかに取り締まられてきたか
第5章(法制史編その2) 「えっちな表現」規制はいかに制度化されたか
第6章(日本編) 日本における性表現規制の歴史
著者等紹介
白田秀彰[シラタヒデアキ]
1968年宮崎県生まれ。法政大学社会学部准教授。一橋大学法学部卒業。同大学大学院博士後期課程修了。博士(法学)。専門は情報法、知的財産権法(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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小鈴
21
「えっちはなぜいけないのか」についてキリスト教圏の分析と補論で日本の分析をしています。結論からいうと「根拠はない」ということになります。成人の性表現の規制は困難となり、現在の焦点は未成年を扱った性表現になっていると。で、日本の場合は近世までえっちは猥褻扱いではなく、近代でキリスト教の価値観が導入され、欧米諸国(外からの視線)の視線が意識されて価値内面化していったと。しかし、それもネット社会到来で規制も難しくなった、とざっくり説明しています。00年代までならこの説明でよいのかもしれないが、→2022/05/01
どらぽん
13
えっちなのはなぜいけないとされるのか、本書はそれを欧米の文化史の側面から解きほぐしていく。上層階級が財産を安定して相続するために、無闇な性交が望ましくないという政治・経済上の理由から始まり、宗教においても、禁欲がより教義に忠実である証になり、禁欲が一般化していった。最終的には法に盛り込まれていく。著者はあとがきの中で論証が足りないと批判を覚悟しているが、自分にはとてももっともらしく根拠も十分に思えた。逆に、納得できた分、現状で色眼鏡を掛けてしまっているとも思えるので、規制派の意見も知りたいと思った。2021/08/04
ヤギ郎
13
性表現規制について一般向けに論じた学術書。前半は,「わいせつ」や「性表現」について,根本に立ち返るかたちで論じている。次に著者の専門の英米における表現規制について考察する。考察の前段階として,古代からの性の理解について述べている。性についての見方と宗教の関係が良く分かる。少ないけれど,日本についての記述もある。法的な議論が少なかったのが期待はずれ。本書を土台に理解を深めていきたい。2018/09/06
すのさん
7
丁寧にすっきりとまとめられていてとてもわかりやすかった。①庶民の性生活の緩やかさが階級を区分する規範となった。上層階級は財産相続の点で性への厳格さが重要であった。②宗教的な面から性は忌むべきものだとされ、禁欲さが信仰を表すものとなっていく。③宗教権力が低下することで、性への規制も俗化され道徳化される。女性の地位向上のために性が利用される。④産業発達とともに性表現規制が社会の関心事になる。宗教的民間団体や女性解放運動団体は性表現規制を訴える。⑤アメリカでは性表現規制と表現の自由に関する裁判が行われていく。2019/01/26
爺
7
なぜ成人指定のAVでモザイクが必要なのか。成人なら結婚も出来れば風俗にも行ける。異性の性器を見ることに障害はない。同性のなら自分の股間を見ればいいわけだし。海外サーバーから無修正動画配信をする反社会的勢力に金を流し、AV女優たちギャラや著作権肖像権にも問題は及び、モザイク処理の手間からDVD製作費も跳ね上がる。映倫やらビデ倫だってチェック項目が減って楽だろうに、誰もモザイク撤廃を言い出さない。やっぱり「えっちでもいいと思います!」と思っていると思われることを恐れているのだろうか。でも成人指定してるよね?2018/12/09