内容説明
本書は、第二次世界大戦末期に英国がインド独立を約束したことを契機に、英インド政庁が主導した安全保障戦略の検討過程を描いた地政学的研究である。中心人物オラフ・カロウ外務長官率いる「総督の研究グループ」は、インド独立後の「力の空白」に備え、ロシアの南下、中国の復興、日本の影響などを踏まえた戦略的議論を展開した。著者は、詳細な公文書をもとに、当時の知的格闘と戦略構築の過程を臨場感豊かに再現している。カロウの思考は、地政学を「永続的な考え方」として体現し、インド亜大陸を地理空間の中心において世界を見るもので、冷戦期の米国戦略や現代のインド太平洋戦略にも通じる視座を提供する。戦略とは何かを問い直し、過去から未来を見通すための貴重な知的資源となる一冊といえる。
目次
イントロダクション
第1章 総督の研究グループ
第2章 戦略的な中心―インド亜大陸
第3章 インドの外側のリング・フェンス―緩衝システム
第4章 インドの外側のリング・フェンス―ソ連と南西アジア
第5章 インドの外側のリング・フェンス―中国と東南アジア
第6章 インドの内側のリング・フェンス―バローチスターン、ネパール、ナガ丘陵
第7章 北西辺境州
第8章 イスラーム、パキスタン、そしてグレート・ゲームの未来
エピローグ
著者等紹介
ブロブスト,ピーター・ジョン[ブロブスト,ピータージョン] [Brobst,Peter John]
1967年生まれ。オハイオ大学歴史学准教授。専門は地政学と大戦略に重点を置いた大英帝国史。1988年テキサス大学にて歴史学博士号取得。専門分野に関する出版物や論考、書評等多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。



