内容説明
人生に訪れる危機と不安。「普通の人々の、平凡でどうでもいいと考えていた、だけど歪んでしまった一日」。時代と社会の病を敏感に捉え平凡な人間群像を暖かく包み込む、篤実なリアリズム小説。
著者等紹介
ソユミ[ソユミ]
1975年ソウル生まれ。2007年「ファンタスティック蟻地獄」で文学手帳作家賞、同年「クールに一歩」で第1回チャンビ長編小説賞を受賞しデビュー。都市に暮らす人々の孤独や葛藤を暖かい眼差しで繊細に描く、韓国を代表する女性作家
金みんじょん[キムミンジョン]
ソウル生まれ東京育ち。10代で来日、KBSラジオや京郷新聞、雑誌『ヴォーグ』や『シリーズマガジン』などを通して日本のニュースを紹介し日本文化を韓国に伝える活動をしている。慶應義塾大学総合政策学部卒業、東京外国語大学大学院総合国際学研究科博士課程単位取得退学
宮里綾羽[ミヤザトアヤハ]
1980年、沖縄県那覇市生まれ。多摩美術大学卒業。那覇市栄町市場にある宮里小書店の副店長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ふじさん
76
6作の主人公たちは、貧困、失業、借金、離婚、夫の失踪、身近な人々の死、母親との別れ等を経験し、以前とは違う状況に戸惑い、喘ぎ苦しみ、抜け出せない現実に向き合うことになる。誰にでも訪れる社会の危機や不安の断面を日常の次元で解剖し、今の時代と社会の闇を敏感に捉え、そこに生きる普通の人々の人生を温かい目線で描いたリアリズム小説。韓国の現代小説ではあるが、語られている現実は日本と同じで、読んでいて違和感がない。どうしようない現実が語られているが、わずかな解放の光がみえるのが救いだ。2025/03/13
ケイティ
30
韓国らしいテイストの短編集。「普通の人々の平凡でどうでもいいと考えていた、だが歪んでしまった一日を描いた」とのことで、誰もが当たり前のように絶望を纏って、淡々と毎日を押し進めるリアリティが絶妙。前に読んだ長編作が良かった印象だが、短編だと逃げ場がなく息が詰まる感覚がより際立つ。やるせなさを持て余しながらも、その振り幅は自分次第でもあると同時に思う。「希望でも挫折でもなく肯定でも否定でもない。そうやって流れていく生の瞬間を描きたい」という著者の言葉通りの作品。2024/12/15
キクチカ いいわけなんぞ、ござんせん
25
主にソウルの人々の短編集。非正規やバイトで必死に家賃を払いながら、貧しい生活をする若い女性や、学業を続けられず詐欺の下働きの様な事をしてその日の食い扶持を稼ぐ青年や、旅先で夫が行方不明となり仕事をしながら探す妻など、詰んでしまった生活で茫然としながら生きる人の話が多い。妻と離婚してサウナで暮らす人たちもいて、彼らはどこで間違ってしまったか、自分でもわからない。どの人も自分が悪い事をしたように、誰にも相談しないで耐える様に生活している。多分、日本にも似た人たちがたくさんいると思う。2025/04/22
かおりん
24
書評から気になって借りた本。一般市民の不安や問題意識を丁寧に扱った短編集。国民性もあるのか、息詰まる感じで疲れた人が多くて読んでてしんどかった。歪んでしまった1日を描いたというのがぴったり。解説と訳者あとがきで「そうだったのか」とよく分かった。2024/11/24
チェアー
7
韓国の現実にある裂け目を描いた短編集。 その裂け目からは希望とも絶望ともつかない「何か」がのぞく。希望にするのも絶望にするのも本人にかかっている。 テーマは重くて、読んでいる時も1行ずつ自分の中に取り入れるように読むのだけど、読み終えると不思議と残っていない。現実を示す事は、現実を描くこととは少し違うからだろうか。 2024/11/07