内容説明
事故から11年。人間が引き起こした災害は戦後最大の「国内避難民」を生み、人々の生活に深い分断と苦悩をもたらし続けている。圧倒的暴力を前に我々は希望を見出すことができるのか。国内外の人類学者らが当事者とともに、隠蔽された社会構造を読み解く。
目次
イントロダクション―分断と対立の根底にある問題群
第1章 慢性状態の急性増悪―原発事故被害者に対する構造的暴力の解明
第2章 突然の追放、突然の富、そして妬みと差別―福島県飯舘村長泥・強制避難者の苦難
第3章 閉ざされたドア―東京・高層マンションにおける避難者コミュニティの苦闘
第4章 日常の苦境、模索する希望―「強制避難」単身女性たちの暮らし
第5章 福島から自主避難した母親たちのディレンマ―家族と社会を尊重しながら、どう放射能から子どもを守るか
第6章 草の根からの「市民」と、国や東電が構築する「市民」―ゆらぐ「市民性」に対峙する市民放射能測定所
第7章 住宅支援打ち切りへの抗議―自主避難者による抗議運動の成否を分けた六つの要因
第8章 自主避難者が帰るとき―放射線防護対策と社会的適切性の狭間で
第9章 「大熊町の私」から「私の中の大熊町」へ―ふるさとの構造的な喪失と希望の物語の生成
第10章 分断と対立を乗り越えるために―当時小学生だった若者たちとの対話から
エピローグ―苦難と希望の人類学
著者等紹介
辻内琢也[ツジウチタクヤ]
愛知県生まれ。幼少期をアパルトヘイト下の南アフリカ共和国で過ごす。早稲田大学人間科学学術院教授、早稲田大学災害復興医療人類学研究所所長。博士(医学)東京大学。浜松医科大学医学部卒業、東京大学大学院医学系研究科博士課程ストレス防御心身医学修了、千葉大学大学院社会文化科学研究科文化人類学満期退学。ハーバード大学難民トラウマ研究所(Harvard Program in Refugee Trauma:HPRT)客員研究員等を経て現職。専門は医療人類学、文化人類学。医師、日本心身医学会認定専門医、日本医師会認定産業医
ギル,トム[ギル,トム] [Gill,Thomas Paramor]
英国ポーツマス生まれ、オックスフォード育ち。明治学院大学国際学部教授。ロンドン大学(LSE)博士(社会人類学)。ケンブリッジ大学(英文学)卒業、ロンドン大学政治経済学院修士課程、ロンドン大学政治経済学院博士課程修了。京都文教大学人間学部文化人類学科、東京大学社会科学研究所を経て現職。専門は社会人類学。日本のドヤ街、ホームレス、賭博者の研究を経て、2011年の東日本大震災をきっかけに福島研究を始める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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