内容説明
1日に2500頭の牛が食肉処理される産業屠殺場―その現場に政治学者が覆面労働者として潜入し、現代社会における監視と権力、暴力の恩恵を受ける多数者の矛盾と欺瞞、そして(視界の政治)の輪郭を浮かび上がらせる。
目次
第1章 ありふれた光景に潜んでいるもの
第2章 血が流される場所
第3章 屠室
第4章 今日はこれでおしまい
第5章 10万個のレバー
第6章 至近距離で仕留める
第7章 品質の管理
第8章 管理の質
第9章 視界の政治
付録A 屠室内の分業
付録B 牛の体の部位と用途
著者等紹介
パチラット,ティモシー[パチラット,ティモシー] [Pachirat,Timothy]
マサチューセッツ大学アマースト校政治学部教授。イェール大学大学院では人類学・政治学の泰斗ジェームズ・C・スコットに師事し、PhD(政治学)取得
小坂恵理[コサカエリ]
翻訳家。慶應義塾大学文学部英米文学科卒業(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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きくまる
1
社会学者である筆者は、アメリカの牛の屠殺現場に労働者として入り、その現場を克明に記録する。目的は、日常生活から隠蔽された世界を描くことで、今の世界の構造を描くことだ。個性のある命が、均一な工業製品になっていく過程は正直むごく、読むのもつらい。ただこの都合の悪いことの隠蔽は屠殺に限らない。筆者曰く、忌まわしいものを隠蔽・隔離することが文明化であり、この隠蔽は、文明化が進むほど広がるとする。筆者はそれらの可視化の可能性を探っているようだ。それはきっと今より豊かな世界かもしれないが。牛さんが本当にかわいそう・・2025/04/30
おはら
1
この書評(https://book.asahi.com/jinbun/article/14752897)を読んでからずっと気になってた本。ページをめくる手が止まらない、そんな一冊だった。社会や政治を変革する為に、その都合の悪さゆえに隔離され見えなくされてきたものを明るみに出す「視界の政治」は、解説にもあるとおり、フェミニズムに対しても示唆に富んでいると思った。2023/02/19
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- 和書
- 初版 サムエルソン経済学