内容説明
フーコー、マルクス、ハイエクから対労組マニュアル、企業CM、経営理論まで、ネオリベラリズムの権力関係とその侵食の歴史をあざやかに描き出し、現代の社会構造をえぐり出す。
目次
第1部 言うことを聞かない労働者たち
第2部 マネジメント革命
第3部 自由企業への攻撃
第4部 異議申立者たちの世界
第5部 新たな規制
第6部 統治不能社会
著者等紹介
シャマユー,グレゴワール[シャマユー,グレゴワール] [Chamayou,Gr´egoire]
1976年、ルルド生まれ。バシュラール、カンギレム、フーコーというフランス認識論者の系譜に連なる科学技術の思想史家。高等師範学校フォントゥネ・サン・クルー校を卒業。リヨン、エコール・ノルマル・シュペリウールCERPHI(修辞・哲学・思想史研究所)に哲学研究員として所属。現在はパリ大学ナンテール校ほかで講義を担当。ラ・デクーヴェルト社の叢書「ゾーン」編集長も務める
信友建志[ノブトモケンジ]
2004年京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程修了。現在、鹿児島大学医歯学総合研究科准教授。専門は思想史、精神分析(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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msykst
17
1970年代に高まった労働者の不服従や社会運動は、深刻な「民主主義の統治性の危機」をもたらした。社会防衛のための統治技法は如何にして狡猾かつ巧妙に再編されたのか。紆余曲折の結果編み出されたのは、シャマユーが「ネオリベラル主義のミクロ政治学」と呼ぶものであり、それは政治的な対抗を市場選択の問題に置き換えた。それは人々の力を脱中心化し、分散させる。それはイデオロギー云々の話ではなく、シンプルに政治テクノロジーである(P350)。2025/01/04
Mealla0v0
12
フーコーが描き出した統治性の危機は、福祉国家の危機から新自由主義的統治への移行に対応したものであったが、本書が注目するのはもっと卑俗なもの、ビジネス界の言説である。ビジネス界は統治性の危機にどのように対応したのか。興味深いのは企業という組織の私的統治である。労働者を直接に統治したのは企業であり、市場のアクターもまた企業である。企業の統治原理は、官僚制に近似したマネージメントの技法など、自由主義的な統治技法=見えざる手とは異なる。それはシュミット=ハイエク路線の統治の在り様であるという。2022/05/19
PETE
5
経済学、そして特に経営学が、学問であるどころか、労働運動や環境運動などに対して闘争方法、遅延・言い訳・誤魔化し戦略を経営陣に提供することに終始してきたかの目録。 究極はハイエクによるピノチェト支持。2022/08/09
河村祐介
3
なんつうかTwitterやらに溢れる自称保守の方々の冷笑型抑え込み言説のルーツというかネタもとというか原典のオンパレードというか。ハイエクなどのネオリベ古典と、ポストフォーディズム的な経営・マネージメント論と、異議申し立て運動を飲み込み悪魔合体というか。非常にいまの日本の政体の分析に良きツールになるというか。2022/07/22
檜田相一
2
60年代末の対抗文化によって、工場で若者は反抗的になり、ボイコットや株主総会の乗っ取りという企業に対する攻撃が盛んになる。しかし、ビジネス界はうまくこうした攻撃を統治する術を獲得し、新自由主義を拡大させてきた。そして、グローバル企業や、チリのピノチェト政権への支援といった実例から、「自由」という言葉を借りながらいかに新自由主義勢力が権威主義を志向してきたかが明らかにされる。2025/07/06
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