内容説明
『アメリカの奴隷解放と黒人』は、歴史を理解する上でもっとも近づき難いとされる学術の立場から、奴隷制の終焉とそれが暗示することについて、継続中の議論を再考するものである。…本書は、永遠に続くかのように思われる論争、すなわち社会の頂点に立つ者が法に基づいて行使した権力の所産として歴史を理解すべきか、それとも社会の底辺から民衆が起こした運動の所産として歴史を理解すべきかという二元論の陥穽から脱する試みでもある。『アメリカの奴隷解放と黒人』が強調するのは、自由の到来は一瞬にしてなし得た訳ではないし、ひとりの人間の行ないによるものでもなく、多くの人々が携わったプロセス(アメリカの場合は一世紀近くも要したプロセス)を通じて実現したという点である。つまり、奴隷制の崩壊はひとつの宣言というよりも運動であり、ひとつの出来事というよりも多くの人々の人間ドラマが刻まれた複雑な歴史なのである。(「序章」より)
目次
序章 誰が奴隷制を廃止したのか
第1章 奴隷制廃止までの一〇〇年
第2章 平等の音を響き渡らす
第3章 流血の闘いは続く
終章 ついに自由を得る
著者等紹介
バーリン,アイラ[バーリン,アイラ] [Berlin,Ira]
1941‐2018。Ph.D.(University of Wisconsin,Madison)。1974年以来、メリーランド大学で歴史学の研究・教育に40年あまりにわたって従事。この間、「解放民と南部社会プロジェクト」の初代編集主幹(1976‐1991年)、アメリカ歴史家協会(OAH)会長(2002‐2003年)などを歴任。2004年よりアメリカ芸術科学アカデミー会員。アメリカ合衆国の奴隷制研究の第一人者として多数の著書や編著書がある
落合明子[オチアイアキコ]
筑波大学大学院歴史・人類学研究科博士課程中退。博士(文学)。現在、同志社大学グローバル地域文化学部教授。専攻はアメリカ黒人の歴史と文化
白川恵子[シラカワケイコ]
慶應義塾大学大学院文学研究科後期博士課程修了。博士(文学)。現在、同志社大学文学部教授。専攻はアメリカ文学、文化(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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