目次
欧米の集団妄想とカルト症候群
もう一つの十字軍運動と集団妄想
フランス、ドイツ、スペインの異端狩り
ペストの蔓延と鞭打ち苦行者の群れ
トレントの儀礼殺人とユダヤ人差別
人狼伝説から人狼裁判へ
ミュンスターの再洗礼派と千年王国の興亡
魔女狩りと集団妄想
アメリカに飛び火したセイラムの魔女狩り
フランスの王政復古と幻視―天空の十字架、大天使の出現、蘇る聖遺物崇敬
ルルドの奇蹟と聖母巡礼ブームの生成
アメリカの秘密結社クー・クラックス・クラン―人種差別団体の実像
ヒトラー・ユーゲントの洗脳
ヒトラー演説と大衆
集団妄想とカルト症候群の生成メカニズム
著者等紹介
浜本隆志[ハマモトタカシ]
1944年香川県生まれ。関西大学名誉教授、ヴァイマル古典文学研究所、ジーゲン大学留学。ヨーロッパ文化論・比較文化論、関西大学博士(文学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
itokake
18
集団妄想とカルトの歴史から、人間の本質をあぶりだした名著。魔女狩り、異端審問、ハーメルンの集団失踪、儀礼殺人(反ユダヤ)、人狼裁判、ミュンスターの反乱、巡礼ブーム、ナチス、KKKと欧米の事例が中心。あとがきで日本の「ええじゃないか騒動」「地下鉄サリン事件」にも言及。本書を読んだ後だと、日本の事件も同じ構造だとわかる。集団妄想に時代は関係ない。歴史を知ると人間が見えてくる、まさにそれを体感し、衝撃でくらくらした。集団妄想は人間が持つ本質なのか。きっかけさえあればパンドラの箱は開いてしまう。2023/02/15
香菜子(かなこ・Kanako)
8
欧米社会において集団的熱狂がどのような悲劇をもたらしてきたかをまとめた良書。現代の日本や世界で起きている差別問題の多くが、集団的熱狂、著者の浜本先生がおっしゃるところの集団妄想とカルト症候群が原因なのかもしれない。2017/11/23
perLod(ピリオド)🇷🇺🇨🇳🇮🇷🇿🇦🇵🇸🇾🇪🇸🇾🇱🇧🇨🇺
7
2015年刊。 アメリカ帝国主義を追っていると実働部隊としてのカルトが嫌でも目につく。そこでカルトが欧米において顕著な特性を持っているのかもしれないと思って読んだ。 なお本書の出版社の明石書店はここ数年で「トランスジェンダリズム」というカルトに洗脳されてしまいました。悲しむべし。 第1章:もう一つの十字軍と集団妄想。「少年十字軍」と「ハーメルンの笛吹き男」について。前者は悲劇というには無残すぎる。後者の説明については東方植民説をベースにしつつも、それの弱点を別の説で補完している。→2024/01/24
mittsko
5
「カルト症候群」とは聞きなれない。編者曰く、「集団妄想と似た症候群としてカルトがある」。編者が専門のドイツにそういう概念があるのか。単に「カルト」とだけ言われることもあり、カルト症候群に「政治的カルト」も含められているあたり、この概念の肝なのか(よくわからない) ⇒ 内容はまさに表題が示す通り!類型化と生成機構の形式的把握はおこなわれるが、理論書ではない。索引はないが参考文献表は充実。読む事典とするのがよさそう。なお、編者は当然、集団妄想や「カルト症候群」が欧米社会に限られないと述べている2017/11/28
田中峰和
5
本書では集団妄想とカルト症候群を欧米に限定しているが、日本でも幕末の「ええじゃないか」騒動、関東大震災の朝鮮人虐殺、連合赤軍事件、オウム真理教事件など多数ある。キリスト教をバックボーンとする欧米社会では、終末論から千年王国建設の連鎖、異端狩り(魔女狩り)、反ユダヤ、子どもを巻き込んだ集団妄想の4つに分類される。千年王国は下層民の救いであり、魔女狩りは後のドイツの人種差別、反ユダヤにつながる。子どもを巻き込んだ集団妄想ではハーメルンの笛吹き男伝説が有名。いずれにしろ現実逃避か他者への不寛容が鍵になるようだ。2015/10/24