内容説明
戦後の香港社会において19世紀以来のコロニアルな状態から私たちの見ている現代社会へと変質する転換期が、それぞれの分野に相前後しながら存在した。本書所収の各論は「読み・書き」という言語活動の対象・所産もしくは関係する媒体や社会現象を切り口として、転換期あるいは転換期が存在した可能性を論じる。この現代社会への転換期は「現代香港のイメージ」の形成とも深い関わりを有しているため、転換期を論じることは現代香港のイメージの形成を問うことにもつながる。その意味で、本書は従来の香港像に対する再考をもその目的として有している。
目次
戦後香港社会の転換期
第1部 「読み・書き」とメディア(香港島市街区の識字率と識字層;戦後初期の「広東語文芸映画」;劉以鬯「封倒」と1970年代の香港文学;アルコール飲料の新聞広告から見た香港社会の変化;広東語点字の表記法の改定)
第2部 「読み・書き」と社会(1950~60年代香港華人のナショナリズム―尊孔運動の興隆と衰退;医療・衛生の現地化と香港アイデンティティの初期形成―1960~70年代;1974年の公用語条例改正と中文の使用;新青學社とその活動―雑誌『新青』を中心に)
著者等紹介
吉川雅之[ヨシカワマサユキ]
1967年生まれ。1985年京都大学文学部入学。1999年京都大学大学院文学研究科博士後期課程満期修了。1999年より東京大学大学院専任講師を経て、同准教授(総合文化研究科言語情報科学専攻)。文学博士。専門は香港・澳門研究(言語・文字)、中国語学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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