出版社内容情報
特殊教育から特別支援教育への転換を、歴史・社会・制度の変遷やインクルーシブ教育の潮流の中でとらえ、本質と課題を明らかにする。一人一人の必要に応じた適切な教育を通じ、自立や社会参加に向けた支援をするために、求められる専門性とは何かを論究する。
シリーズ刊行のことば
第2巻 序
第1章 障害児教育の歴史と理念
第1節 慈善的教育事業としての出発から特殊教育の成立まで
第2節 特殊教育から障害児教育への展開
第3節 障害児教育と分離・統合問題
第2章 特殊教育制度の意義と改革
第1節 特殊教育制度の成果と限界
第2節 日本の特殊教育制度
第3節 諸外国の特殊教育制度とその改革
第3章 特別支援教育の本質と課題
第1節 障害児教育から特別支援教育への転換
第2節 特別支援教育の本質
第3節 世界的動向としてのインクルーシブ教育とその革新的理念
第4節 特別支援教育とインクルーシブ教育との関連
第4章 特別支援教育の制度
第1節 一貫した相談支援体制の整備
第2節 特別支援教育の枠組み
第3節 特別支援教育と財政問題
第5章特別支援教育における教育課程の開発
第1節 教育課程の概念と原理
第2節 教育課程に係る法令と学習指導要領
第3節 特別支援教育における教育課程の開発と編成
第6章 特別支援教育の実践学
第1節 教育実践学の理念と方法
第2節 教育実践学としての授業
第3節 特別支援教育における授業
第7章 特別支援教育実践の展開
第1節 視覚障害教育の展開
第2節 聴覚障害教育の展開
第3節 知的障害教育の展開
第4節 肢体不自由教育の展開
第5節 健康障害教育の展開
第6節 情緒障害・自閉症教育の展開
第7節 重複障害教育の展開
第8節 軽度の発達障害児の教育・支援の展開
第8章 特別支援教育の教員の養成と現職教育
第1節 特別支援教育の教員養成
第2節 特別支援教育における現職教育の意義と制度
第3節 専門性の継承と発展
第4節 専門家および保護者との連携
資料編
教育基本法
学校教育法（抄）
学校教育法施行令（抄）
学校教育法施行規則（抄）
特別支援学校小学部・中学部学習指導
要領
トピックス
1 ダンピング（dumping）
2 小学校・中学校における自立活動の指導
研究ノート
1 口語法はなぜ手話法に代わることができたのか
2 障害のはっきりしない子どもたちの発見と可視化への模索
執筆者紹介
事項索引
人名索引
第2巻 序
2007（平成19）年4月、特別支援教育制度は、それまでの制度設計の段階から、本格的な実施段階に入った。2009（平成21）年3月には、新たな特別支援学校学習指導要領等が公示されるに至り、特別支援教育の理念の実現に向けて、特別支援学校は、使命の自覚と確かな専門性に基づき、迅速でかつ組織的な課題解決に当たらなければならない。
さて、国際的なインクルーシブ教育の動向にあって、わが国の特別支援教育において求められる専門性に着目するとき、次の視点に注目できよう。
まずは、特別支援教育における新たな専門性の涵養・向上である。センター的な役割の付与により、関係者は、地域の専門家と連携・協働して、諸課題の解決を行うこととなる。このことに関わる専門性の涵養・向上は、喫緊の課題となろう。
次に、特殊教育が培ってきた専門性の継承・発展である。第二次大戦後の民主教育への胎動の中で成立した特殊教育は、60年余にわたる理念と実践の架橋により、その専門性を醸成してきた。特別支援教育への転換にあたり、関係者は、特殊教育が培ってきた専門性を検証し、成果を特別支援教育において求められる専門性へと昇華しなければならないのである。不易なるものを希求してこそ、教育の本質に迫るといえる。
このように、本巻は、特別支援教育において求められる専門性を考究し、特別支援教育の本質に迫り、実践の創造を企図するものである。
本巻は、次ぎの内容から構成する。
第一のクラスタは、障害児教育、特殊教育制度の理念と成果に関わる内容である。特別支援教育において継承・発展すべき専門性の本質に迫るものであり、第1章「障害児教育の歴史と理念」、第2章「特殊教育制度の意義と改革」がこれに該当する。
第二のクラスタは、特別支援教育の理念と実践を理解し、新たな専門性に迫る内容である。特別支援教育の本質・制度・教育課程を概説し、実践学の規定と各障害における実践の展開について言及する、さらに、特別支援教育の教員養成および現職教育を現状と課題を整理する、第3章「特別支援教育の本質と課題」、第4章「特別支援教育の制度」、第5章「特別支援教育における教育課程の開発」、第6章「特別支援教育の実践学」、第7章「特別支援教育実践の展開」、第8章「特別支援教育の教員の養成と現職教育」がこれに該当する。
二つの専門性の視点から各章をいずれかに帰属させたが、単純には各章を分けられないことも付記しなければならない。各章は、内容の完結はしているものの、幅広く、当然ながら、両者の視点を包含するからである。
最後に、資料をあげた。紙幅の関係上、教育基本法をはじめとした法令および特別支援教育学習指導要領を掲載した。各章における内容を補完し、特別支援教育における実践の深化に供するものである。
2009年4月 筑波大学障害科学系：安藤隆男／東日本国際大学：中村満紀男
目次
第１章 障害児教育の歴史と理念
第２章 特殊教育制度の意義と改革
第３章 特別支援教育の本質と課題
第４章 特別支援教育の制度
第５章 特別支援教育における教育課程の開発
第６章 特別支援教育の実践学
第７章 特別支援教育実践の展開
第８章 特別支援教育の教員の養成と現職教育
資料編
