内容説明
イタリアから帰国し息子セリョージャとの再会を果たしたアンナだが、心の平穏は訪れない。自由を求めるヴロンスキーの愛情が冷めていくことへの不安と焦燥に苛まれながら、彼とともにモスクワへと旅立つ。一方、新婚のリョーヴィンは妻キティとともに兄ニコライの死に直面するのだった。
著者等紹介
トルストイ,レフ・ニコラエヴィチ[トルストイ,レフニコラエヴィチ][Толстой,Л.Н.]
1828‐1910。ロシアの小説家。19世紀を代表する作家の一人。無政府主義的な社会活動家の側面をもち、徹底した反権力的な思索と行動、反ヨーロッパ的な非暴力主義は、インドのガンジー、日本の白樺派などにも影響を及ぼしている。活動は文学・政治を超えた宗教の世界にも及び、1901年に受けたロシア正教会破門の措置は、今に至るまで取り消されていない
望月哲男[モチズキテツオ]
1951年生まれ。北海道大学教授。ロシア文化・文学専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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藤月はな(灯れ松明の火)
97
アンナがどんどん、嫌な女になっていく・・・。ヴロンスキーとの子、アニーを可愛がらないのは恋に溺れる「女」ではなく、家庭への義務を思い出させる「母」へと引き戻すからなのだろうか?息子のセリョージャにも内緒で会いに行くが、その方法が余りにも急襲過ぎるので口が開くしかない。そのせいで使用人が解雇された・・・。一方でスキャンダルの火種も消えていないのに社交界にのこのこ、出てきたのに毅然とせず、「以前みたいに敬意を持って接して欲しい」なんて、「私は被害者です」とわめきたてる被害妄想で恥知らずな女としか思えない。2017/03/24
Willie the Wildcat
76
暗中模索の中、疑心暗鬼。心を満たすモノ。愛情、信頼、宗教・・・。相手を想う気持ちが強すぎるが故に盲目となる感。直面した兄ニコライの死。生への思いを再認識する場面が印象的。一方、自分の気持ちに素直すぎるアンナの息子への思い。大人の矛盾に戸惑わされるセリョージャの姿が痛い。ドリーとの再会が、自身を取り戻す最後の機会だった気がしてならない。夫婦・家族の在り方の違いも浮き彫り。是非ではなく価値観の問題だが、時勢が苦悩を深める。噛み合わないなぁ・・・。迷走するアンナがその時勢・時代の象徴なのかもしれない。2016/05/29
たかしくん。
66
第3巻は、リョーヴィンとキティの結婚式から、割と平和に始まります。いかにも「あるある」と言いたくなる微笑ましい新婚生活のあと、ニコライの死へと場面が重くなります。一方で、アンナはついに息子に会いに突撃っと、まぁご乱心状態!ぶっちゃけヴロンスキーも、彼女に対して心の中で「面倒くさぁ!」と思っているはず。でも、きっかけはヴロンスキーだった筈ですよねぇ(笑)。 後半は、アンナとドリー、ヴロンスキーとリョーヴィンがそれぞれに直接対決へ! 随所に現れる、トルストイの気の効いた喩えが、また素晴らしい!2017/09/03
33 kouch
55
自分で選んだ刺激的で素晴しい人生が、何故か今度は自分を苦しめ束縛する。この恵まれた人間の我儘の果ての因果応報が読者に一種痛快感を与えている気がする。この主人公の分かり易い起伏に対して、脇役のリョービンやカレーニンの行く末は全く先が読めず、でも気になる。ドリーもキテイも気になる。こういった脇役でも「気になる」が多いから名作なんだろうと思う。今回も望月さんの後書きが本当に面白い。マインドマップや、各評論家の隠喩や寓意など新たな読書の楽しみ方を呈示してくれている。ストーリー整理のためにも後書きは是非一読を!2024/01/12
SOHSA
50
《図書館本》リョーヴィンとキティの結婚、ニコライの死、アンナとヴロンスキーの田舎での新生活とドリーの訪問、貴族選挙の行方等々、いくつもの物語が同時進行的に展開していく。それぞれの場面の描写がダイナミックで読み手の眼前に映像がリアルに広がる。背後に近づく暗雲の気配は徐々に存在感を増し、いよいよ最終巻へと落ち込んでいく。幸せはどこにあり、どこにないのか。2016/05/01