出版社内容情報
少子高齢化、グローバル化の進む日本の労働市場で、外国人専門職・技術職は重要なプレイヤーとなりつつある。しかし日本は、魅力的な舞台を提供できているだろうか。外国人プロフェッショナルの雇用の現状と課題を追究し、現実に即した政策提言を放つ。
はしがき
第1章 はじめに
第1節 専門的、技術的分野の外国人
1 これまでの日本にとっての専門的外国人
2 現在の日本にとっての専門的外国人
3 今後の日本にとっての専門的外国人
4 日本で働く専門的外国人の問題の持つ広がり
第2節 研究の目的と仮説
1 目的
2 問題意識
3 仮説
第3節 研究の方法
1 文献調査
2 企業を対象とした調査
3 専門的外国人を対象とした調査
4 需給の状況及び需給を結ぶチャンネルについての考察
5 政策提言
第4節 本稿の構成
第2章 専門的外国人の受入れとその状況
第1節 序
第2節 先行研究・調査
1 高度人材の受入れ政策に関する先行研究・調査
2 高度人材の受入れ促進策の評価に関する先行研究・調査
3 高度人材の受入れ状況の国際比較に関する先行研究・調査
4 小括
第3節 専門的外国人
1 定義
2 専門的外国人の活動と専門性に関する受入れ基準
3 職業分類における専門性との比較
4 受入れ制度の国際比較
5 小括
第4節 受入れの状況
1 日本への専門的外国人の受入れ状況
2 受入れ状況の国際比較
3 小括
第5節 要約と考察
1 要約
2 考察
第3章 需要側の状況
第1節 序
第2節 先行研究・調査
1 専門的外国人の受入れが十分でない原因に関する先行研究・調査
2 国際労働力移動の要因に関する先行研究
3 小括
第3節 用いるデータの概要
第4節 専門的外国人の雇用状況
1 外国人雇用の状況
2 専門的外国人の現在の雇用・今後の予定・過去の経験
第5節 専門的外国人に対する雇用ニーズ
1 専門的外国人の雇用理由
2 専門的外国人の採用に当たって重視する点及び条件
第6節 専門的外国人の就労環境
1 専門的外国人の雇用人数
2 企業側及び労働者側からみた現在活用している能力
第7節 専門的外国人を雇用しない理由
1 専門的外国人を雇用しない理由と企業の姿勢
2 企業の属性別専門的外国人雇用に対する姿勢
第8節 要約と考察
1 要約
2 考察
第4章 供給側の状況
第1節 序
第2節 先行研究
1 キャリアに関する先行研究
2 ライフキャリアからのアプローチに関する先行研究
第3節 専門的外国人に対するインタビュー調査の概要
第4節 日本で働くこととした理由
1 日本で働くこととした理由
2 日本に留学することとした経緯
3 小括
第5節 将来キャリアの展望の観点からみた日本での就労
1 プロフェッショナルとしてのキャリア形成の困難さ
2 キャリア・リターンの限界(Japanese Trap現象)
3 昇進や部内者化の可能性の低さ
4 企業内転勤における問題
5 労働市場の流動性の低さ
6 小括
第6節 日本の職場における問題点
1 日本の職場における問題点
2 日本の職場の文化についての分析
3 職業キャリアの視点からの分析
4 入国経緯別職場の問題点
第7節 現在の仕事で活用している能力と専門的外国人のライフキャリア
1 現在の仕事で活用している能力
2 入国経緯別ライフキャリアに関わる事項
第8節 専門的外国人に対するアンケート調査
1 アンケート調査の概要
2 インタビュー調査とアンケート調査の比較
第9節 将来キャリア構想に基づいた専門的外国人の類型化
1 将来キャリア構想による分類
2 将来キャリア構想による分類別専門的外国人の特徴
第10節 要約と考察
1 要約
2 考察
第5章 需給を結ぶチャンネル
第1節 序
第2節 先行研究・調査
第3節 需要側の状況
1 概況
2 企業の属性別チャンネル
3 採用したい人材別チャンネル
第4節 供給側の状況
1 概況
2 専門的外国人の属性別チャンネル
3 勤続年数別チャンネル
第5節 要約と考察
1 要約
2 考察
第6章 専門的外国人の受入れ・雇用をめぐる政策提言
第1節 序
第2節 先行研究・調査及び提言
1 専門的外国人の受入れ政策に関する既存の提言
2 専門的外国人の人事労務管理に関する先行研究・調査及び提言
第3節 政策提言に当たっての基本的な考え方
第4節 行政としての取組
1 行政推進体制
2 具体的な政策
第5節 企業としての取組
1 専門的外国人雇用が企業にもたらす利益とコストと企業の現況
2 専門的外国人についてのダイバーシティ・マネジメント
3 専門的外国人雇用の具体的な取組
第6節 政策実現のための現実的な道筋
1 行政としての取組の現実的な道筋
2 企業としての取組の現実的な道筋
第7節 発展途上国における課題
第8節 要約と考察
1 要約
2 考察
第7章 おわりに
第1節 要約
1 専門的外国人の受入れとその状況
2 需要側の状況
3 供給側の状況
4 需給を結ぶチャンネル
5 専門的外国人の受入れ・雇用をめぐる政策提言
6 小括
第2節 考察
1 日本への専門的外国人の流入の状況
2 専門的外国人のキャリアの視点からみた日本での就労
3 企業の専門的外国人に対するニーズ
4 専門的外国人をめぐる需給や就労環境
5 専門的外国人を引き付け、活躍の場を提供するための対応策
第3節 残された課題
資料
(資料1)専門的、技術的分野の外国人に関する既存のアンケート調査等
(資料2)企業調査1次調査票(回答結果含)/外国人の就業の実態に関する調査
(資料3)企業調査2次調査票(回答結果含)/日本で就労する外国人のキャリア形成に関する調査(法人向け)
(資料4)アンケート調査調査票(回答結果含)/日本で就労する外国人のキャリア形成に関する調査(外国人向け)
(資料5)インタビュー調査対象者リスト
(資料6)インタビュー調査対象企業等リスト
引用文献
はしがき
「外国人労働者の受入れ」という言葉がしばしば聞かれる。少子高齢化が進み、労働力供給も次第に抑制されていくことが見込まれる中、日本の労働市場において、外国人は欠くことのできない重要なプレイヤーとなりつつある。しかし、「受入れ」という言葉の中には、外国人が日本の職場で働き、また、日本で生活するという意味合いがあまり込められていない。外国人一人ひとりのライフキャリアにとって、他国に行き、そこで働き、生活するということが重要な転機になる場合が多いだろう。とりわけ、他国で働くことは、外国人一人ひとりの職業キャリアにとって、将来に向けての重大な決意を伴う場合が多いだろう。そうした外国人の職業キャリアの視点を踏まえて、日本は専門的な外国人に相対しているだろうか、このような疑問を持ったときに感じた不安が本稿を書いた原点の一つとなっている。日本政府は、専門的、技術的分野の外国人については、積極的に受け入れるという基本方針をとっている。しかし、いくら受入れという入口を開いたところで、職業キャリアの展開にとって魅力的な場を提供できなければ、外国人は、働く場として日本を選ばないだろう。
このような不安は、日本の経済社会が直面している他の問題にも相通じている。専門的、技術的分野の外国人をめぐる課題を解決していくことは、同時に、女性、高齢者、障害者等、多様な主体に対して活躍の場を提供できにくい、ワーク・ライフ・バランスの実現が難しいといった、日本が現在抱えている様々な問題を打破する一つの鍵にもなると考える。
こうした問題意識を持ちつつ、まとめたのが本稿である。ベースとなったのは、筆者が大学に出向中に執筆した博士論文であるが、統計データを更新し、記述や分析を見直している。なお、本稿における提言等は、全て私見に基づくものであることを念のため申し添えておきたい。
(…後略…)
目次
第1章 はじめに
第2章 専門的外国人の受入れとその状況
第3章 需要側の状況
第4章 供給側の状況
第5章 需給を結ぶチャンネル
第6章 専門的外国人の受入れ・雇用をめぐる政策提言
第7章 おわりに
資料
著者等紹介
塚崎裕子[ツカサキユウコ]
1961年東京生まれ。東京大学法学部を卒業後、労働省入省。労働省職業安定局外国人雇用対策課課長補佐、政策研究大学院大学助教授等を経て、現在、内閣府男女共同参画局推進課長。法政大学大学院から博士(政策科学)取得(論文「専門的、技術的分野の外国人雇用をめぐる課題と対応策―職業キャリアの視点からの一試論」)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。