自閉症児の心を育てる―その理解と療育 (第2版)

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自閉症児の心を育てる―その理解と療育 (第2版)

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  • サイズ B6判/ページ数 277p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784750323701
  • NDC分類 378.6
  • Cコード C0036

目次

第1章 自閉症児との出会い
第2章 自閉症児のいる家庭
第3章 自閉症児の療育の開発―「子どもの生活研究所」における療育を中心に
第4章 幼児期療育の知見
第5章 自閉症療育の成熟
第6章 自閉症・発達障害者への支援の展開
付録

著者等紹介

石井哲夫[イシイテツオ]
1927年生まれ。1950年東京大学文学部哲学科(心理学専攻)卒業後、1967年日本社会事業大学教授。1996年同大学名誉教授。1995年白梅学園短期大学学長を経て、現在、社会福祉法人嬉泉常務理事、子どもの生活研究所所長。自閉症研究の第一人者として、長年にわたり自閉症児者の研究および療育に尽力している。白梅学園短期大学名誉学長、目白大学学術顧問、社団法人日本自閉症協会会員、東京都発達障害者支援センター長、社団法人全国保育士養成協議会会長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

出版社内容情報

自閉症心理療育の先進的実践研究の書として1970年に上梓され、行く度かの改訂を経ながら、著者自身をして最も愛着を感じると言わしめる名著。発達障害者支援法の成立による新たな支援のあり方、アスペルガーなど高機能の領域にも言及した全面改訂新版。

新版の序
はじめに――自閉症の心の育ちを考える
第1章 自閉症児との出会い
 1 忘れ得ぬ二人の子ども
 2 臨床的にとらえられた自閉症像
 3 自閉の心をのぞいて
 4 発達過程に見られる自閉性
 5 自己の現実化
 6 注意の集中と遮断
 7 役割知覚の断続性
 8 自閉症スペクトラム
 9 情緒障害(感情障害)と自閉症
第2章 自閉症児のいる家庭
 1 両親の苦悩
 2 親の姿から、育ての心を学ぶ
 3 自閉症児へ関わる工夫や苦労
第3章 自閉症児の療育の開発――「子どもの生活研究所」における療育を中心に
 1 療育の問題点
 2 療育における受容の意義
 3 療育の課題
第4章 幼児期療育の知見
 1 自閉症児における療育の可能性とその実例
 2 療育目標と療育効果
 3 療育期間
 4 症状の程度に関する検討
 5 療育の効果と限界――「こぐま学園」の学童期以後の療育をめぐって
 6 自閉症児の将来
第5章 自閉症療育の成熟
 1 自閉症研究のはじまり
 2 自閉症の原因について
 3 自閉症の診断
 4 どのくらいいるか?
 5 自閉症児に特徴的な行動とは
 6 自閉症と強度行動障害
 7 受容における交流理論の展開
 8 交流を進める役割演技
 9 幼児期療育の新たな展開
 10 現実のよい評価により、自己認識を変える
 11 自閉症児者の地域生活と家族支援
 12 関係療育論・心のケアと癒し
第6章 自閉症・発達障害者への支援の展開
 1 自閉症児者への福祉援助
 2 自閉症児者のトータルケアシステムとは
 3 わが国の自閉症政策とその問題点
 4 発達障害者支援法の理念
 5 発達障害者への援助に関わる考え方
 6 社会的要請としての発達障害者支援
 7 アスペルガー症候群についての理解と対応
 8 支援を実行するために
 9 対人援助の基本
おわりに
付録 学校教育法施行令の一部改正等について
   自閉症・発達障害支援センター運営事業実施要綱(抜粋)
   発達障害者支援法
   社団法人日本自閉症協会支部一覧
   発達障害者支援センター名簿
   自閉症について知りたい方へ

はじめに――自閉症の心の育ちを考える
 私は一九七〇年に「自閉症児がふえている」という、初めての本を出版した。これがその時の序文である。
 《自閉症児について、これほど世間の関心をあつめ、しかも福祉や教育の施策が行なわれるようになるとは、予想もしなかった。
 一九六〇年代は、臨床心理学者がテスト研究から心理治療研究にむかった時代ともいえよう。その意味から、私が自閉症児の心理治療を目ざしたのも、いわばこの時代の動きにのっていたからともいえる。この時に平井信義博士(当時お茶の水女子大学教授)の御教示があって、心理治療を一段とすすめていく意味の治療教育にふみ出したことが、いわば先駆的、実験的試みだったのであろう。正直のところ出発点においては、自閉症児がこれほどよくなっていくものとは思っていなかった。多くの知恵おくれの子どもと同じように、「動くところを動かして」というような欠陥を意識した指導を考えていた。ところが、「子どもの生活研究所」の手さぐりの治療教育でも、かなりよくなっていく子どもが現われはじめたのであった。この実践結果によって、マス・コミがとり上げ、諸方面からの見学が相つぎ、世論が喚起されたのであった。
 今まで自閉症児は「変わった精神薄弱児(以下精薄児という)」「重い精薄児」とみなされていた。従ってこれらの自閉症児は、特殊学級に入れればよいほうで、精薄施設や精神病院に入れられていた。つまり集団生活の枠組にあてはまらなければ、放置されてしまっていた。戦後の特殊学級においても、やはり集団指導による適応性をすすめる教育が行なわれていて、その必要性を掲げながらも、個別的なとりくみが不足していた。これにはアメリカ流の適応心理学の流れがその底にあったからとも考えられよう。特殊学級においても見放されていた自閉症児の治療教育の成果は、社会に特殊教育のみならず一般教育や、精薄施設、精神科医療についての問題提起の素材となったことは当然のことであった。
 「子どもの生活研究所」は、これらの急激な変化の渦中にあって、わが国唯一の民間児童福祉実験室としての役割を再確認している。創設当時、私のほかに二十数名の所員がいたが、毎週火曜日に合宿しながら、幼児保育、治療教育、才能指導といった多面的な課題にとりくんでいた。
 本書は、この「子どもの生活研究所」の実践を土台にして、日頃わたしが研究会において提示して来た自閉症児についてのとりくみをまとめたものである。外からみると一見奇妙にみえる自閉症児の言動が、治療教育の場の中で、自閉症児を一人の人間としてみようという心ぐみをもち、そこに自分の生活の基盤を求めているセラピスト達によると、極めて明瞭な意味をもって感じられるようになるわけである。
 セラピスト達になつきはじめた自閉症児たちの姿は、長年の私の臨床経験の中で奇跡に近いものを感じさせている。どんな子どもも親になついて可愛がられるが、この子達は親にもなつかないために放置されやすい実情は、一刻も速く改善しなければならないことである。また家庭の中に一人の自閉症児がいるために、他の子どものように遊びに行けないきょうだいがいたり、親子心中を考えたりする親がいるということも是非とも何とかしなければならない。
 このように臨床の場において展開されて来た問題意識が福祉の施策に直接とりいれられるほど、現在の社会は弾力性をもっていない。
 私の切なる希いは、本書のようなマス・コミを通して訴えることが唯一のチャンスになっている。その点本書に託しているものは大きいものなのである。
 一九七〇年代が、臨床の場での実践を科学化する年代ならば、自閉症児の発達のメカニズムがさらに明らかにされていくことであろう。幸いわたしには平井教授の他に、学生時代からサイコドラマの学習を通して横浜市立大学外林大作教授や、幼児心理、指導における東京学芸大学品川不二郎教授の御指導が受けられるということは、まことに心強いことである。
 本書は、日本社会事業大学「のびろ学園」、「子どもの生活研究所」の同学の諸君の励ましや援助がなかったら成りたたなかったかと思う。いそがしい実践の合間に、わたしとの話し合いを通して提供してくれた素材はいずれも光っているものであった。あらためて学習と実践の意欲をかきたてられる思いになった。》
 そして、今回これに加筆訂正し新たな書をまとめることにしたのである。
 最近、障害者の人権問題に関しての論議が多く行なわれている。このことは歓迎すべきことであろうが、その視点が定まってきているとは思われない。まだ差別や虐待や無視が多いこの世の中では、そのことに対処するということのみに追われているように思うのである。
 私はこれから、人間としての自閉症の人の何を大切にして人権を守れば良いかということを明らかにしていきたいと考えている。少なくとも今、はっきり言えることは、自閉症に関しての世の中の対応は極めて冷たいということである。世の中の多くの人たちは、自閉症児者は時と場合をわきまえない言動をする人として、またその家族は子どものおかしな行動を制し、統制できない者として、差別しているのである。
 差別を指摘するだけで変わることならいくらでも行なうが、そのように生やさしいものではなく、自閉という障害にたいしての無知というか、自閉を理解することが不可能と思われる社会の文化的枠組みが堅くできあがってしまっているのだ。
 現在の社会的な枠組みといってまずあげられることは、勤勉な社会的な徳である。自閉症児者はあまり勤勉でなく(ところを得て自分の興味が向けば、非常に勤勉になるが)、何に心を向けて生活しているかわかりにくいので、社会参加を進めるという意味での職業の場を提供してくれる企業は少なく、生涯雇用も続かない。したがって、自閉症児者のための生活援助は、義務教育期間を終え三年間の高等部を卒業してしまえば、通所施設の世話にならざるを得ないのである。それゆえ、現在進行している社会福祉基礎構造改革では、自閉症の人が通所施設を中心にした地域的な療育が受けられるようになることを求めたい。
 自閉症の人にとって、基本的には、地域社会の中の安定した家庭で暮らせることが幸せであるが、現代社会では多くの阻害や迫害を受ける自閉症の人が後を絶たない。これを改善していくためには、周囲の人たち、とくに家族の暖かい理解と援助が必要であり、これを支える社会的な資源が必要になってくるのである。
 わが国の発想として、具体的・直接的なかかわりを行なっている人たちの自閉症の心理を理解し、関係を育てることを重要視する体制を育てていくことを考えている。そのためには現在、教育機関や社会福祉施設などで自閉症の人にかかわる職員が、自閉症の人が一人の人間として、彼らの生活の過程に人間的な心がはぐくまれていけるよう心のケアや生活の支援を心がけてほしい。
 自閉症児者の心のケアとは、自閉症児者側から見ていく気持ちが大切であって、基本は、家族が中心となって社会的支援を得て、その生活の維持や改善を心がけることだろう。家族といえどもなかなか徹底して自閉症児者側に立てるものではないので、教師や福祉援助者たちの補助的な役割や、さらに人生の多くを補完できる通所施設の弾力的な運営が望まれてくる。そして、家族機能の補完・代替としての入所施設やグループホームが求められるのである。
 従来から問題にされてきた社会隔離的な状況にある施設を根本から改善して、保護者と協力し、家庭療育を補完でき、かつまた家庭生活を支援できるような体制を整備していくことが望まれる。とくに支援職員は、自閉症児者の精神的な働きについての深い理解が必要である。本書で手がけている実践的な観点から、自閉症児者の認知や感情に関しての洞察と対応を多く心がけてもらいたいと思う。
 そして、地域における社会福祉資源としての通所施設やグループホーム、さらには短期的な入所施設のすべてが、自閉症の人のリハビリテーションなどができる機能を整備した新しい施設として再生されることが望まれる。
 そのためには自閉症の人への発達援助のあり方としての療育方法やケアシステムの研究、そこにかかわる援助者への強力な研修が必要であろう。そして支援者は保護者と協力して、長期にわたって自閉症児者をケアしていく「心の家族」であるという気持ちの持ち方が望まれるのである。そのことを「心を育てるケアワーク」と呼び、社会に広がっていくことを願っている。(二〇〇六・六・一)