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チョムスキーの「教育論」

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  • サイズ B6判/ページ数 395p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784750322667
  • NDC分類 370.4
  • Cコード C0036

内容説明

「言語学者にして思想家・社会運動家」として世界的に知られる著者が、教育のネオリベ化・市場民主主義化に対して警鐘を打ち鳴らす。

目次

序章 チョムスキー教育学
第1章 「家畜化教育」を超えて―マセードとの対話
第2章 教育にとって「家畜化」とは何か
第3章 教育にとって大学とは何か
終章 教育にとって市場経済とは何か―新自由主義秩序における市場民主主義
補章 チョムスキー教育学・補遺

著者等紹介

チョムスキー,ノーム[チョムスキー,ノーム][Chomsky,Noam]
マサチューセッツ工科大学(MIT)教授。1928年生まれ。57年にTransformation Analysis(邦訳『文法の構造』)で生成文法に関する初の著作を公刊し、言語学のみならず脳科学・認知科学にも巨大な影響を与えることになった。69年には米国の外交政策批判を中心にした初の著作American Power and the New Mandarins(邦訳『アメリカン・パワーと新官僚』)を上梓して以後、メディアやグローバリズムなどに関しても多数の著作を著す。英Prospect誌と米Foreign Policy誌による合同世論調査(2005年10月)では、世界で最も重要な知識人として選出された

寺島隆吉[テラシマタカヨシ]
岐阜大学教育学部教授。1944年生まれ。東京大学教養学部教養学科(科学史・科学哲学)卒業。英語教育応用記号論研究会(JAASET)代表。コロンビア大学、カリフォルニア大学バークリー校、サザン・カリフォルニア大学客員研究員、カリフォルニア州立大学ヘイワード校日本語講師

寺島美紀子[テラシマミキコ]
朝日大学経営学部教授。1953年生まれ。津田塾大学学芸学部国際関係学科卒業。米イーロン・カレッジ客員研究員(93年9月~94年3月)および東京大学客員研究員(2000年1~8月)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

出版社内容情報

「開かれた自由な社会」において、逆説的にも教師は支配的なイデオロギーに無批判に順応し、事実を歪曲・捏造して生徒を洗脳、自らを再生産する。米国の外交政策を事例に、教育による「家畜化」を暴露、真に民主的で自由な社会をつくる教育のあり方を考察する。

序 章 チョムスキー教育学(ドナルド・マセード)
  一 学校の「自己家畜化」機能
  二 「嘘の教育学」と「同意の捏造」
  三 言葉を読む力と世界を読む力
第1章 「家畜化教育」を超えて――マセードとの対話
  一 「見ること」を拒否する
  二 誰にどう真実を語るのか
  三 人民統制委員としてのメディアと学校
  四 民主主義度をはかる確実な尺度
  五 学校は生徒に何を提供すべきか
第2章 教育にとって「家畜化」とは何か
 第一節 教育における知識人の意味
  一 三つの訓練場になった学校
  二 知識人から身を守るべき手段を生徒に
  三 社会科学(特に歴史)の学び方・教え方
 第二節 教育における民主主義の意味
  一 デューイとラッセルの教育観とは
  二 「新しい時代精神」が東欧にもたらしたもの
  三 かつて米国の労働者は何を求めて闘ったのか
  四 貴族的政体論と民主的政体論
  五 自由市場は子供に何をもたらしたか
  六 自由市場の標的は英米の家庭だけではない
  七 政治への軽蔑は誰にとっての勝利か
第3章 教育にとって大学とは何か
 第一節 危機の時代における大学の機能
  一 大学は誰にこそ奉仕すべきなのか
  二 大学は営利的私企業に転落したのか
  三 学生は社会の管理者という自分の役割に抗議していた
  四 決定と管理のさらなる分散化こそ大学改革だ
 第二節 冷戦の時代における大学の機能
  一 冷戦時代の知的風土――自己正当化と盲目的愛国主義
  二 積極行動主義と大学――MITとハーバード大学の違い
  三 ベトナムと知識人――自己規制と体制への服従の典型例
終 章 教育にとって市場経済とは何か
    ――新自由主義秩序における市場民主主義
  一 冷戦に勝利をもたらした原理?
  二 「ひと」を支配する「法人」の誕生
  三 「市場民主主義」の生け贄・ニカラグア
  四 米国への脅威――自力再生モデルとしてのキューバ
  五 自由市場はメキシコに何をもたらしたか
  六 ハイチ大統領のための市場経済短期集中コース
  七 保護主義による米国のメキシコ支配
  八 保護主義による英国のインド支配
  九 米国の「新自由主義」への転換
  一〇 「新自由主義」に磔にされたハイチ
  一一 利益は大企業に、費用とリスクは国家に
  一二 広がる貧富の格差と強まる国際的団結
補 章 チョムスキー教育学・補遺
 補章のための訳者解説(寺島隆吉)
 第一節 「歴史捏造」の技術を検証する
  一 「歴史捏造」の技術
  二 沈黙の義務
  三 サミット
  四 メディアと国際世論
  五 和平合意の解体
 第二節 「嘘の教育学」の仮面を剥ぐ
 第三節 「観戦型スポーツ」の役割
訳者あとがき

訳者あとがき(抜粋)
チョムスキーの主張と読み方
 本書の著者チョムスキーについてはあまりにも有名すぎて紹介する必要もないほどですが、他方、今でもチョムスキーという人物は二人いると思っている人が日本では少なくありません。というのは言語学者のチョムスキーを知っていても、思想家・社会運動家としてのチョムスキーは日本ではつい最近まであまり紹介されてこなかったからです。
 チョムスキーは一九二八年一二月七日生まれですから、二〇〇六年一月現在で七七歳ということになります。日本では大学教授に定年というものがありますが、米国の場合は終身教授という仕組みがあって彼は今でもMITの教授として言語学の研究と指導のために世界の先頭に立っています。
 彼が創始した生成文法は「今ではもう古くなっていて昔ほどの影響力は英語学の分野ではない」という声も聞かれますが、それは失語症その他の認知科学に彼が与えた巨大な衝撃力を知らないからではないでしょうか。言語学が文学部に置かれている日本では「自然科学(特に生物学)としての言語学」という彼の主張が理解されがたいのも無理はないと思われます。ノーベル賞に言語学の分野があれば、まず真っ先に受賞すべき人物だと考えます。
 他方、思想家・社会運動家としてのチョムスキーですが、米国の主流メディアからほとんど無視された存在です。民主主義の模範として自他共に認めているはずの国からしてみれば実に奇妙な現象ですが、これが「言論の自由」を誇る米国の実態です。彼の主張が常に米国の外交政策を鋭く批判し、日本で最近はやりの言葉で言えば「自虐史観」の持ち主と受け取られているからでしょう(九・一一事件の時も「最大のテロ国家は米国だ」と発言して有名になりました)。
 このように国内では無視された状態のチョムスキーですが、世界中からインタビューや講演依頼が絶えず、五年くらい先まで予定が埋まっていると言われているくらいです。またシェイクスピアやマルクスなどを除けば現在存命の人の中で最も頻繁に引用される人物としても有名ですし、最近(二〇〇五年一〇月)おこなわれた英国の有力月刊誌プロスペクトと米外交専門誌フォーリン・ポリシーによる合同世論調査では、世界で最も重要な知識人としてチョムスキーが選ばれています。二位のイタリアの作家・哲学者ウンベルト・エーコをはるかに引き離し、約二倍の得票率でした。

 私たちは先進国のモデルとして米国を見る姿勢をそろそろやめる時期に来ているのではないでしょうか。チョムスキーがいま執筆中だというThe Failed State『失敗国家』もそんな願いを込めて執筆されているのではないかと推察しています。一刻も早い刊行が待たれます。

二〇〇六年元旦
寺島 隆吉