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現代語譯 更級日記

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  • サイズ A5判/ページ数 153p/高さ 21cm
  • 商品コード 9784750322162
  • NDC分類 915.36
  • Cコード C0095

出版社内容情報

平安中期に書かれた『更級日記』を、わかりやすく読みやすい言葉に直し、よみがえらせた一書。いまを生きるひとびとに現代の言葉で味わってもらうよう、原文を精密に読み込み、絞り出し紡いだ日本の名作。これを機に古典に親しまれることを願ってやまない。

はじめに
一、門出
二、別れ
三、父のことども
四、宮仕えなど
五、今は昔
六、世の常の
譯者あとがき
原文更級日記

譯者あとがき
 「更級日記(さらしなにっき)」は、平安中期、寛弘五年(一〇〇八)生まれの作者が、數え年十三歳から五十一歳のころまでのできごとを綴った一代記である。作者の名は當時の習慣で、菅原孝標(すがはらたかすゑ)の女(むすめ)としか傳わっていない。
 それから無慮一千年、冩本に冩本を重ねて今日まで傳えられてきた。その間、「はじめに」にも記したように、多くの先學の研究が加えられ、碩學(せきがく)の手になる校註本も少なくない。そうした本書に、いま何を付け加えるところがあるだろう。

 私はとくに國文學を專門にするものではないが、昔大學受驗の參考書でこの古典の拔粹に觸れることがあった。そのとき、なんとなく、その素朴な語り口に惹かれるところがあった。
 作者はその両親について、本書の所で「こだいの人」と形容する。「古代の」、すなわち「今様」の反對で、古風な、昔かたぎの、時代れの、因循な……等々の意味である。
 作者はこれだけの作品を殘した人だけに、非凡な鋭い感性の持ち主である。そして大勢の從者にかしずかれ牛車(ぎっしゃ)に乗って外出する受領(ずりやう)階級の、エリートといえばエリートである。
 しかし、それでもどこかにこの「古代の人」の面影を多分に殘した人ではなかっただろうか。「今様」のポストモダンの尖端を切るような人ではなく、「お話」を聞くのが大好きな、子供心の自然性を多分に殘した人だったように思われる。
 旅に出ればその先々で、農夫の昔話を採譜せずにいられない。天子さまの即位式で人が都に殺到するという日に、それに逆らって都を下ろうとする茶目っ氣がある。寄宿した農夫の家で盗人と疑われて、それを「失禮な話だが面白い」と感じる遊び心がある。
 宮仕えも、公逹(きんだち)たちとの語らいも、身内の話にもどこか控え目な、あの懷かしい「古代の人」の奧行きが感じられるのである。
 控え目で、けっして目立つ人ではないが、子供心を殘した善良な人たち、そのような人が千年前にもいたし、今もそこらに大勢いる。
 受驗時代から半世紀をへて、私はそのような作者の人柄になお惹かれるところがある。そのような作者が、もし平成の今日に生きて今の國語を話す人だったら、その同じ話をこうも語ったのではないかと、私なりに代辯してみたくなったのである。素人の蛇にも怖じぬ「自由譯」である。
(後略)

平成十七年八月十三日
千葉縣、安房國(あわのくに)平群郡(へぐりのこほり)井野里(いのさと)朴石館にて

目次

1 門出
2 別れ
3 父のことども
4 宮仕えなど
5 今は昔
6 世の常の
原文 更級日記

著者等紹介

木山英明[キヤマヒデアキ]
1940年島根縣松江市生まれ。早稻田大學第一文學部卒。ニューヨーク州立大學バッファロー校大學院修了。人類學博士(Ph.D.)。神奈川縣立外語短期大學教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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