世界歴史叢書
征服と文化の世界史―民族と文化変容

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  • サイズ B6判/ページ数 682p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784750320144
  • NDC分類 204
  • Cコード C0322

出版社内容情報

ローマ時代から20世紀までの歴史を、植民地化、軍事化による被征服民族への文化的影響とその受容、変容、伝播の関係から捉え直す。なぜ民族的な違いが生じるのかを人的資本、地理的条件、さらには宗教、人種、思想、科学技術に言及しながら歴史的に明かす。

序 文
謝 辞
第1章 征服と文化
 征服の原因と結果
  征服の文化的帰結/軍事技術/環境的要因/統治形態
 征服者と被征服民との関係
 国家独立と民族自決
 後続章について
第2章 イギリス人
 イギリス諸島
  ローマ支配下のブリタニア/イングランド/ウェールズ/スコットランド/アイルランド
 世界の中のイギリス
  海外のイギリス人/大英帝国/自由の進化
 要約と示唆
第3章 アフリカ人
 アフリカ
  自然環境/奴隷制/経済史
 アフリカ諸国
  ナイジェリア/タンザニア/ガーナ/コートジボアール
 アフリカ人離散者
  イスラム諸国/新大陸/奴隷制の結末
 要約と示唆
第4章 スラブ人
 地理的影響
 文化的発展
  東と西との相違/文化的転移
 中欧東部
  服従/スラブ国家の出現/ポーランド/チェコスロバキア/ユーゴスラビア/業績
 ロシア帝国
  征服と文化/外国人/先住民族/ウクライナ/中央アジア人/ソ連の後継国家
 スラブ人移民
 要約と示唆
第5章 新大陸のインディアン
 地理的条件
 征服と文化
 中南米
  マ

序文
 本書は一九九四年のRace and Culture、続く一九九六年のMigrations and Culturesの三部作の完結編である。この三部作はすべて、一九八二年から書き始めた本来一つの膨大な原稿であった。九〇年代に入り、最初はそうしようと思ったものの、一冊の本とするにはあまりに大きくなりすぎた。オリジナル原稿の一部は、数年にわたって削除されることになった。オリジナル原稿の他の部分は四冊の本にまとめられ、アファーマティブ・アクションの国際調査としてPreferential Policies: An International Perspectiveという題名でこの三部作に先駆けて一九九一年に出版された。残りの部分は単に三分割されただけでなく、三部作の生まれるまでの長い間、その間に出版された新しい学術書を読んだため、継続的に成長・発展したものとなっている。
 これらの本の根底にあるテーマは、人種、民族、国民にはそれぞれ独自の文化があり、文化なくしておのおのの経済史・社会史は理解できない、というものであった。このような主張は控えめに思えるものの、一般的に広く受け入れられている考え方(マイノリティの運命は周囲の「社会」によって決定されるので、その社会は特にマイノリティの貧困という不幸にした場合の文化的帰結を扱った、本書についていえることである。移民と同じく、征服によって世界の文化的状況は異なるものになる。事実、南北アメリカやオーストラリア、ニュージーランド、さらにそれよりは小規模ながら、東南アジア及びアフリカでも、こうした歴史的影響を与えた大量移民を促したのは、多くの場合それに先立って行われた征服である。これらの地域に再定住した人々は、単に征服国家や征服民族の面々であっただけでなく、様々な文化や民族を背景として他所から移民してきた人々をも含む。例えば、東南アジアにおける華僑、アフリカにおけるインド人移民、西アフリカにおけるレバノン人移民がそれである。彼らは植民地体制の法律と政府による庇護を受けて定住したが、その法律と政府には原住民の制度よりも深い信頼を寄せていた。原住民の間にあっては、異なる原住民集団が地域支配を行い、外部からの攻撃に用心深く当たるよりも、外国人の支配下でのほうが、その土地や地域における社会的移動性は高くなる。征服によるマイナス面もまた、お決まりの弾圧から横暴な虐殺・残虐行為にいたるまで、むろん看過すべきではない。
 征服の歴史は国際移民の歴史に似て、問題は広範囲に及ぶ。国、あるいは、地中海の東端地域に集合した国家からは、幾世紀もの間外部に向かって進歩した文化が放射状に持続的に広がっている。
 結局問題になるのは、いかなるテーマや結論がここで提起されるかということでなく、こうしたテーマや結論の背後に存在する事実である。それゆえ頼みの綱となるのはモデルの抽出ではなく、歴史でなければならない。歴史はまた、はるかに限られた選択肢しかもたずに貧時を生きた人々(今日まったく当たり前に受け止めている、進歩を生み出す過程において、猛烈な苦しみを味わうことも多かった)に比べ、いかに我々が豊かさを享受できるようになったか、ということを知る機会を提供してくれる副次的効果を有する。
 民族的相違にかかわる極めて沸騰しやすい問題は、数世紀に及ぶ歴史と国際規模の中で合理的に検討してみる必要がある。そしてそれは、我々自身の場合よりも冷静に他の民族や時代をみつめなければならないし、現代世界よりも広範囲な時代環境で生み出された様々な証拠に基づいたものでなければならない。幾世紀ものうちに民族の相対的地位が大きく変化したということは(国家と文明もまたそうであるが)、ある時間と空間という狭い枠の中でのみ妥当性>フーバー研究所

目次

第1章 征服と文化
第2章 イギリス人
第3章 アフリカ人
第4章 スラブ人
第5章 新大陸のインディアン
第6章 総括

著者等紹介

ソーウェル,トマス[ソーウェル,トマス][Sowell,Thomas]
1930年ニューヨーク生まれ。ハーヴァード大学卒業。コロンビア大学で修士号、シカゴ大学で博士号(経済学)を取得。現在、スタンフォード大学フーバー研究所シニアフェロー

内藤嘉昭[ナイトウヨシアキ]
1958年山梨県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科卒業。現在、駿河台大学教授、学術博士
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

Hiroki Nishizumi

1
大作であり読み出して何度も圧倒された。民族はなぜ移動するのか、といった類いの副題が付いていてもおかしくない。アフリカの地理的要因や新旧大陸の地形差異による人類への影響なども含めて、実に幅広い視点から歴史を紐解いている。勉強になった。2025/03/14

Arte

1
著者が書いた『~と文化』」三部作の最終作らしい。支配していたローマが6世紀に撤退した後、道路水道が荒廃し、レンガも風呂もガラス瓶も棺もなくなったイギリスが19世紀に世界のトップに立ったのは、島国なために船で石炭が運べたのが一因(ドイツは鉄道ができるまで発展できず)とか、アフリカのサハラ以南は台地であり、沿岸が浅く船が近寄れず、川は急峻で滝があり、しかも雪解け水がないため水位が安定せず、要するに水運が全く利用できず、物を運ぶのはすべて人力なため、植民地支配しても儲からず欧州は撤退、その後も停滞しているとか2017/02/05

guranobi

1
人類の進歩の原動力は文化的資本であるとの著者の主張を幅広い事例と検証を交えて論考している。文化的資本とは、進取の精神といった伝統的な人的資本、法制度の尊重などの社会的・文化的な枠組み、外国文化の借用ができる受容性、あるいは外国との距離といった地理的要因も含まれる。日本の明治以降の発展も十分に説明できる考え方だが、一方で現代日本がナショナリズムに偏り、外国文化の受容に否定的姿勢を持ち始めているのではないかという懸念もでてくる。訳者である内藤嘉明先生によるあとがきも、著者の背景やさらなる論考のためにもオススメ2012/06/01

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