出版社内容情報
ナチスの強制収容所における売春宿の成立とその意味。被抑圧者間の差別という衝撃的な事実にもふれつつ,売春婦とされた女性たちの状況を,資料と元囚人へのインタビューによって明らかにする。
1 はじめに
2 性的行状を理由にした「ドイツ人」女性に対する迫害と処罰
3 強制収容所のなかの売春宿
4 国防軍用売春宿とSS用売春宿
5 外国人強制労働者のための売春宿
6 結び
内容説明
本書の中心テーマである強制収容所の売春施設設置は、ナチスが絶滅戦争と呼んだ対ソ戦を軍需生産の面から支えるための方策の一つであり、軍需生産に動員された強制収容所の収容者の労働効率向上が目的だった。つまり戦争の遂行手段の一つだったのであり、この点でドイツ国防軍用の売春施設と同じように、日本軍が設置した「慰安所」と同列にあるといえる。本書はその観点からは、旧ユーゴスラヴァア地域で起こった集団強姦や第二次世界大戦直後のドイツにおける連合軍による強姦に関する出版物と同じく、ここ数年ドイツフェミニズムが関心を向けている「戦争と性」というテーマにつながるものである。
目次
性的行状を理由にした「ドイツ人」女性に対する迫害と処罰
強制収容所のなかの売春宿
国防軍用売春宿とSS用売春宿
外国人強制労働者のための売春宿
結び
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Rutam
3
仲間に分け与えるべき貴重な日常品を貢ぐ労働者たち。彼らは優しくされることを望んでいた。だからパンをあげたり、話をしたり、関係を持つように思う。しかし、それは無意味だった。彼女たちの心は壊れていた。労働者の寂しさを埋めるためのモノとして使われたと思うと嫌悪感しかわかない。彼女たちは生き残った後も心の傷が深く、過去を必死に隠さなければいけない。幸せな生活は望めない。人生を奪われた。2016/11/21
xxx
1
「性の乱れ」を取り締まりたい、しかし「男性」の性欲を発散する場所が無くなるのはこまる…という矛盾した考えが囚人に売春させるという結果をもたらした。国家(男性中心)が性を管理することで起きる悲劇の大きな例であろう。占領地域での女性のレイプが「非常時かつ男性は精神的衝撃を受けているので仕方ない」と加害者側に温情が要求されていたことにショックを受けた。また、同性愛者として収監された者が治療として買春を要求されたことにも触れられており、興味深かった。2018/11/19
くろちゃん
0
主に囚人用の売春宿にいた女性の体験記が多かった。個人的にSS隊員や将校、彼ら専用の売春宿に関する様子の体験記をもっと読みたかったのでその件に関しては少々残念でしたが、ナチスに対する印象がいい意味でも悪い意味でも変わる内容で良書でした。2016/02/11
ERNESTO
0
石川康弘さんに教えて戴いた本。 軍が指揮して作った“慰安所”は、日独しかない。 独では、強制労働の労働効率を高める為囚人用に、同性愛阻止・性病の蔓延防止・兵士の士気を維持・高揚させるために兵士用に、「ドイツ人」女性との接触を避けさせる為に外国人強制労働者用にと、目的別に何種類も作られ、体制に対する忠誠心を促す為の懐柔策として運営された。 2013/01/08
扉のこちら側
0
初読。2010/11/02