内容説明
歴史書からは十分に伝わってこない古代人の姿と彼らの日常生活。簡牘に記された「喜」という人物の生涯を軸として、古代社会を構成した市井の人々の姿をいきいきと描き出す。出土資料から見えてくるのは、歴史書に記された傑出した人物ではない、従来知りようのなかった基層社会を生きた古代人の姿である。
目次
第1章 人の誕生
第2章 出生届―中国古代の戸籍制度
第3章 喜をとりまく人たち―家族制度・郷里制度
第4章 書記官への道―教育制度
第5章 役人生活の始まり―地方行政制度・裁判制度
第6章 結婚と夫婦関係―婚姻制度
第7章 従軍生活―秦の戦役史と軍事制度
第8章 喜のそれから
第9章 老いと死―人生の終わりに
著者等紹介
宮宅潔[ミヤケキヨシ]
1969年岡山県生まれ。京都大学大学院文学研究科博士後期課程研究指導認定退学(東洋史学専攻)。京都大学博士(文学)。京都大学人文科学研究所教授。専攻は中国古代制度史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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崩紫サロメ
17
睡虎地秦簡を始めとする出土文字史料から、『史記』などには描かれていない日常生活を描く。以前読んだ大澤正昭『妻と娘の唐宋時代』でも思ったが、法律関係の史料というものはあるべき社会の姿と、実際には法律通りに行かない人々の現実が浮かび上がる面白いものだ。女性の地位が低いのはどの時代もそうだが、妻が夫を殴った場合とその逆の場合の違いなど、具体的な事例が多く、法律史料に対する興味が増した。2023/10/02
さとうしん
12
睡虎地秦簡『編年記』を取っかかりに、戦国末~秦の時代の人々のゆりかごから墓場までを語る。人々の生活史を同時代、あるいは前後の時代の史料で肉付けしていくという手法が面白い。2021/08/23
春風
6
話題の『古代中国の24時間』は古代中国人の一日を再現した本だけど、こちらは「喜」という無名な人物の一生の再現を試みた本。たいへん面白いのだけど、使われている史料が著者が専門とする法律文書に寄りすぎな気も。2022/02/10
かどの炭
0
秦代のとある地方官吏・喜の墓から発掘された編年記を元に、秦(・漢初)の社会制度、生活史を紹介している。始皇帝の行幸が喜の暮らす安陸を通り過ぎたという事も、編年記に書き残されている。本当に同時代の人なんだなぁと何だか感動してしまった。2024/04/10
アル
0
中国古代史に興味がある人には微妙に有名そうな睡虎地の「喜」さんの生涯を中心に、秦〜漢代の、歴史に名を残さない人々の生活再現を目指す本。 もちろん再現は限定的だが、法律や判例文書から見える社会の理想と実態のギャップ、秦の領土の急激な拡大に制度や人々の意識が追いついていない状況など、興味深い内容が詰まっている。 終章、埋葬はあの世への引っ越しであり、冥界での仕事や生活にこまらないよう副葬品を収める習俗は、当時の人々の意識が伺える。 期待に違わず実に面白かった。2021/09/27