内容説明
「守銭奴」「タルチュフ」など数々の名作を生み、古典喜劇を大成したモリエールの全作品を新たに翻訳、製作・発表年代順に収録する。各巻に各国の研究者による論文や評伝、資料、年表を付して刊行する決定版全集。
目次
作品(恋こそ名医;人間嫌い;いやいやながら医者にされ)
研究論文(モリエールと医学;モリエールの『人間嫌い』について)
巻末資料
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ろべると
8
2冊め。医者にまつわる2作では、虚勢を張る無能な医者たちや、ニセ医者にまんまと騙される人たちを笑いのめす。傑作とされる「人間嫌い」では、宮廷などにはびこる嘘や追従を断固として拒否するニヒルな正義漢に喝采する人もいれば、そんな主人公が思いもよらぬ恋に振り回される様に、それ見たことかと溜飲を下げる人もいるだろう。かように人間の深層を面白おかしく暴き出して笑い飛ばすモリエールは、シェイクスピア劇の道化のようでもある。2022/05/10
ラウリスタ~
7
『恋こそ名医』、『人間嫌い』、『いやいやながら医者にされ』。医学と医者への不審に基づく、ちょっと下品な笑いからなる他二作に対して、笑いにおけるけたたましさが抑えられた『人間嫌い』は、同時代観客に対しては笑いの的になっていた主人公が後世の読者からは、人間のあるべき率直な姿(あるいは偽善の支配する社会における生きづらさの体現)を提示するという第二の読みを生み出すことになり、傑作。『いやいや』では、夫のDVを受ける妻が復讐をするために、「棒で叩かないと治療しない名医」として夫を紹介。恋する男と結ばれるための仮病2019/07/08
nightowl
1
「人間嫌い」の現代的着眼点は良いし人間嫌いの癖に恋愛はする、恋している相手が真逆の本音と建前を使い分ける相手と喜劇としては面白いものの、なんとなくぶつ切れで終わっており残念。「恋する名医」は医者の癖のある喋りに爆笑し(オチもチャンチャンというコント終わりのBGMが聞こえてきそう)、すぐ殴る夫を懲らしめようと妻が思い付いたアイディア「いやいやながら医者にされ」はやれやれと思うような夫の一言で締め綺麗に終わっており、どちらかといえばメインの作品より他作品の方がまとまっている印象。笑劇は起承転結が大事と実感。2016/08/03