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内容説明
“不思議”はいつも、日常世界の裏側にぴたりとはりついている。異色童話集『おとうさんがいっぱい』以来45年ぶり三田村信行と佐々木マキのコンビによる不思議作品集。
著者等紹介
三田村信行[ミタムラノブユキ]
1939年東京生まれ。早稲田大学文学部卒業。在学中から創作を始める。1975年、奇妙な話をおさめた短編集『おとうさんがいっぱい』で注目を浴びる。『風の陰陽師』(日本児童文学者協会賞)、など多数。2009年、巌谷小波文芸賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
市太郎
37
不思議集。ここで言う、不思議とは確固とした目に見える現実の反対でつまり目に見えない現実の事。日常世界に対する非日常世界。それは、触れることの出来ない影法師のようにぴったりとくっついているものなのだそうだ。そこには時に恐怖を感じるものもある。覗いて見ただけで、目が奪われ時に自分自身が消失してしまう感覚を味わう事も。なるほどそうか、と。これは大人にとっても秀作の塊。中間に鎮座する「オオカミの時間」は、この不思議集のなかでも特に格別の時間だ。なんだかんだ、本物の作家とは読者を救いたいと考えている生きものなのだ。2021/08/27
あたびー
30
#日本怪奇幻想読者クラブ 図 短編集 子供向けのような文体なのに子供にふつう聞かせないような内容(奥さんが別の男と駆け落ちしちゃったとか)も出てくるし、そういう意味でも不思議な雰囲気の本だった。以下覚書「われたお面」ずっと昔に双子に半分ずつ分け与えられたお面がまた巡り会う。「見るなの鏡」階段下の鏡に自分の姿が映らないことがあるのを発見した少年。最後はちょっとショッキング。「歯ぬけ団地」空き家というだけでなく物理的に空いてしまう団地。「白い少女」去年の多摩川の氾濫を思い出した。2020/08/20
くさてる
21
あの「おとうさんがいっぱい」の作者の短編集。児童向けの作品だけど、テーマはなかなかシビアで甘えがない感じ。そこがかえって子供にはこういう話を読んでもらいたいな、という印象でした。「ピストルをかまえろ!」の連作も不思議かつ怖かったけれど、「オオカミの時間」がとくに素晴らしかった。あまりにも苦いけれど、真実をついている。良かったです。2020/05/03
ちぃ
17
不思議作品集。「最後の王様」が好き。2023/06/20
ROOM 237
16
佐々木マキさんのイラストによるシンプルな装丁で大人も食指が動く児童文学は、悪夢のような不条理ホラーからハードボイルドSFまで他の児童書ではお目にかかれないニッチな短編集。83歳の三田村さんが教えてくれるのは死や恐怖、築50年の団地生活者の回顧録だけではない。他人をジロジロ見てはいけないし傷つかないと人の痛みは分からない、支配欲の成れの果てなど、ちょっと日常では伝えるニュアンスが難しい御法度を諭すように散りばめている。日常で遭遇しないとは言い切れない絶妙な匙加減の話が怖くて良かった。2022/09/12