内容説明
11歳の夏の1日が46年後、魔法をかけた。そうだった…。あの日もこんな時間に窓を開けて、生まれたての朝の空気を鼻の奥まで吸い込んだんだった…。美しい物語。
著者等紹介
高楼方子[タカドノホウコ]
函館市に生まれる。おもな作品に、『へんてこもりにいこうよ』『いたずらおばあさん』(この2冊により路傍の石幼少年文学賞)、『キロコちゃんとみどりのくつ』(児童福祉文化賞)『十一月の扉』(産経児童出版文化賞)『おともださにナリマ小』(産経児童出版文化賞・JBBY賞)、『わたしたちの帽子』(赤い鳥文学賞・小学館児童出版文化賞)その他がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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nico🐬波待ち中
126
由々、57歳。息子も巣立ち夫とは程よい距離感を保ち仕事もマイペースに続けている。何事も順調な彼女が11歳の頃の自分"ゆゆ"と向き合うことから物語は始まる。人生も半ばを過ぎ、ふと過去の自分と対峙する。不安になり物足りない気持ちに駆られたり、遠い日の記憶の中に迷い混んだり…。人生は楽しいことばかりではない。失敗したり傷ついたりしたことも、その時は辛くても長い目で見れば、そこにしかない良さに気づかされることもある。高楼さんの作品は『十一月の扉』以来。今回は大人の女性に向けてエールを貰えた物語。読めて良かった。2019/12/22
ちゃちゃ
124
多感な思春期の頃、私たちの誰もがつまらないことで舞い上がったり落ち込んだりして、期待と失望の浮き沈みを繰り返すことがあっただろう。未熟で愚かで情けない自分。でも、今はそんな自分に器用に蓋をして、澄ました大人の顔をして生きている。11歳の〈ゆゆ〉の忘れられない夏の日が、46年後、結婚して翻訳家となった由々に突然蘇る。〈モデラート〉に〈控え目に、節度をもって〉生きるなんて、本当の自分に向き合えてる?自分の中にある未熟な少女の存在を受け入れたとき、過去のほろ苦い思い出にも再び光があたり未来を照らしてくれるのだ。2019/12/02
モルク
111
57歳の翻訳家の主人公が思い出す11歳の夏の日の出来事。お気に入りの黄色の花のワンピースに身を包みワクワクしながら友人の家を訪れるが…。ディアベリのソナチネ、一五少年漂流記…その他もろもろのワードが現在と繋がる。1日だけの姉の家庭教師へのほのかな想いと、現在の行きつけの喫茶店を手伝う彼と同じ名の若者。11歳の時の記憶をたどりながらなぞる道。大きな出来事があるわけではないが胸がきゅっとなる。装丁画がとても素敵!2020/02/15
みかん🍊
105
50代半ばの女性が11歳の頃のある夏の日を追従する、といってもタイムリープではない、その頃住んでいた町で子供も独立し翻訳の仕事をしながら大人として暮らしているが11歳の頃の胸の疼きや大好きなワンピース仄かな初恋そんな少女の頃の気持ちを内に抱えていた事に気付く、海の見える自分だけの仕事部屋、散歩したり行きつけのカフェで美味しい珈琲を飲みながらの読書、憧れる生活です。胸に刺さっていた棘が解けたときはほろりとしました、とても綺麗な小説でした。2020/01/24
ゆみねこ
99
翻訳家の由々には忘れられない11歳の夏の一日があった。思春期の入り口の少女の頃を思い、ゆゆちゃんの頃に立ち返る由々。高楼さんが紡ぐ世界に入り込んで一気に読了。十五少年漂流記、読み返したくなった。2019/12/08
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