出版社内容情報
戦国大名が群雄割拠し、天下統一へと歩みを進めていた時代、天皇や公家たちはいかなる存在であったのか。武家の頂点にあった足利将軍や信長・秀吉・家康といった天下人が、天皇・公家たちと政治的交渉を繰り広げ、互いに利益を求めつつ利用し合った実態を明らかにする。朝廷は「武家の傀儡」とするイメージを覆し、天皇・公家の主体性を再評価する。
内容説明
戦国時代、天皇や公家たちはいかなる存在であったのか。足利将軍や天下人が、天皇・公家たちと交渉を繰り広げ、互いに利用し合った実態を解明。朝廷の「武家の傀儡」イメージを覆し、天皇・公家の主体性を再評価する。
目次
第1部 足利将軍と朝廷(公家衆のさまざまな動き;裁判と相論;儀礼から見る将軍と天皇・公家衆との関係)
第2部 織田信長と朝廷(信長の朝廷対応;朝廷の政務運営と信長;信長と天皇・公家衆との交流)
第3部 豊臣政権と朝廷(秀吉の朝廷対応;豊臣政権と天皇・公家衆との交流;秀頼と家康―二人の「武家」と朝廷;家康の対朝廷政策)
著者等紹介
神田裕理[カンダユリ]
1970年東京都に生まれる。1998年日本女子大学大学院文学研究科史学専攻博士課程後期満期退学。一九九八~一九九九年度日本女子大学大学院研究生在籍。一九九九~二〇〇二年度東京大学研究生在籍。元京都造形芸術大学非常勤講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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南北
38
戦国時代から江戸時代初期にかけての皇室や公家はこれまで経済的に困窮し、「伝統的権威」を守る守旧派と考えられてきましたが、近年、新たな資料による研究が進んできたこともあって異なる見解が出てきたようです。皇室や公家を裁判や儀礼から見ていくことで、裁定結果を執行するのは武家であっても、意思決定を行ってきたのは皇室であることが見えてきます。「禁中並公家諸法度」が徳川幕府の押しつけではなく、公家社会の意向で幕府が規定したものであり、朝廷と幕府の合意の上で制定されたものだというのは興味深く感じました。2019/11/11
俊介
18
戦国時代、華々しく活躍した武将たちに比べ、朝廷の影が薄いのは否めないだろう。そんな戦国時代の朝廷の存在意義を見つめ直した本だ。本書が面白いのは、儀礼や贈答など、日常の些細な出来事に注目したことだ。戦国時代とはいえ、基本は日常で、そこには戦とは違う力学が働いていた。そしてきっとそっちの方が社会の実態に近い。信長も秀吉も、割とこまめに天皇に贈り物をし、ご挨拶にもうかがう。そういうのは地味で面倒ではあるけど、当時は「社会人」として果たすべき務めだったのだろう。そういう場面では、朝廷は確かな存在感を発揮していた。2020/11/01
MUNEKAZ
12
戦国時代の朝廷、とくに公武の関係についてまとめた一冊。「傀儡」や「対立」といった従来の見方を退け、公武ともに役割分担をし、協調関係のもとで朝廷も主体的に活動していたとする。面白いのは献上や下賜、参礼といった儀礼関係に注目しているところ。足利将軍や三傑たちの朝廷へのスタンスの違いが興味深い。また朝廷側もあくまで官位や叙任といった朝廷内の論理で武家に対応することが多く、一見右往左往しているようでも、その裏側にあるブレない頑固さが、激動の時代でも生き延びれた秘訣なのかなとも思った。2019/10/03
六点
11
戦国時代の朝廷の行動を、武家との交渉、儀礼、訴訟などから見た見ている。今時「戦国期朝廷衰微説」を真面に信奉している人などいないと思うが、この時代の朝廷もできることはきちんとやろうと努力し、守るべき筋論は守ろうとしていたと感じる。意外なのは朝廷はかなり遅くまで、豊臣氏を「筆頭公家」と扱い、儀礼などを行っていた事である。また、禁中並公家諸法度も、幕府が強制した物では無く、朝廷側の発案に拠ったものであったのは意外の感を持った。当時の朝廷に対するイメージがすっかり改められてしまったぞ。2020/07/19
Toska
9
実力至上主義の印象が強い戦国時代、朝廷(と室町幕府)はどのように生き抜いたのか?というお話。実のところ、儀礼や官職、贈与の体系は厳然として存在し、三好氏も信長も秀吉も決してこれをおろそかにはしていない。この点ではいかなる下剋上も存在しなかった。日本の特徴としてよく言われる「権威と権力の分離」は、ここら辺りにルーツを持つものだろうか。2023/03/03