内容説明
日本医学の制度や思想の源流は江戸時代にあった。曲直瀬道三・杉田玄白・華岡青洲・シーボルト・緒方洪庵ら名医から、無名の在村蘭方医まで。新視点を交えつつ江戸時代医学史を通観。日本医学の特質と課題を解明する。
目次
1 江戸初期―曲直瀬流医学の成立(領主的医療の展開;江戸初期の庶民と医療;西洋医学との出会い)
2 江戸前期―古方派の成立(文治政治の展開と医学;古方派の成立;養生への関心;紅毛流医学の展開)
3 江戸中期―実証的精神の成長(享保の改革と医学;本草学と医学―自然をみる目の発達;古方派の新展開;庶民とともに生きる医師;『解体新書』の時代;蘭学の興隆;解剖の広がり;医学教育の新展開)
4 江戸後期―西洋医学の普及(シーボルトと鳴滝学派;日本外科学の発達;牛痘法の伝来;地域の医学教育)
5 幕末・維新―近代医学の始まり(幕末の西洋医学教育;維新から明治の医学)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Akihiro Nishio
23
大著である。江戸時代の医学本ほぼ全てを入手して書いたのではないか。内科・外科に限らず、産科、眼科、精神科にも言及されている。町医を中心に西洋医学が流入していたことを知る。高価な蘭書を購入し、私塾を作って学び合った医師たちの姿があった。一方、幕府・藩の医学校は閉鎖的であった。いち早く藩校に西洋医学を導入した仙台と米沢が光る。難を言えば筆者が歴史家で、自然科学に通じていないこと。例えば「白内障の手術を会得した」などさらっと書くのみで、人工レンズの無い時代にどうやって白内障の手術をしたのかわからない。2017/06/08
陽香
3
201206102017/07/02
のりたま
1
富士川游はいまどきの読者には読みにくく、内容もさすがに古いところがあるようだから、本書が江戸時代の医学の通史の決定版だと思う。江戸時代の医学といっても祈祷や呪いのようなものもあって様々だが、本書は古医方からの漢方と蘭方という2つの流れですっきり読ませる。執筆に当たってかなりの分量を削られたのではないか。主要参考文献のリストも充実している。多紀元孝の百日教育を受けて『本草』『霊枢』『素問』『難経』『傷寒論』『金匱要略』を読みたいと思った。2024/04/03
SIG
0
名医たちの話が各々とまとまっているため、読みやすかった。2012/10/04
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