内容説明
民俗学はいかに形成され、発展してきたのか。近世文人の活動や、明治期の人類学にその萌芽を探る。明治末の民俗学の成立から第二次世界大戦後の進展までを社会の動向をふまえて描き、今後の方向性に指針を与える。
目次
1 近世文人の活動と民俗認識
2 人類学の成立と土俗
3 民俗学の萌芽
4 民俗学の登場
5 民俗学の確立
6 戦争と民俗学
7 日本の敗戦と民俗学
8 日本民俗学会と民俗学研究所
9 アカデミック民俗学への行程
著者等紹介
福田アジオ[フクタアジオ]
1941年、三重県に生まれる。1971年、東京教育大学大学院文学研究科修士課程修了。現在、神奈川大学大学院歴史民俗資料学研究科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
きいち
11
民俗学の歴史の、なんとマンガの歴史にそっくりなことだろう。江戸期からの蓄積があって、実業の世界から来た創始者がとてつもない生産量で活躍、モチベーションがかきたてられる投稿システムによって全国から才能が集い、育っていく・・。創始者が大人げない負けん気の強さで孫弟子にあたる若者にだって喧嘩を売るところまでそっくり(笑)。考えてみると、世阿弥も利休も芭蕉もだな、これがジャンルを草創するということか。◇柳田が最初から調査法や記述法を確立していたことに驚く。高級官僚だった彼はそれをどこから手に入れたのだろう?2013/05/03
三柴ゆよし
10
日本民俗学の形成・展開の過程を、「歴史」として記述した良書。その時代の社会背景のなかに学史を位置づけるというのは、実はこれまでなかった。これ一冊で、近世から柳田國男の死まで、「野」の学問として発達してきた民俗学に、アカデミックな民俗学がとってかわるまでの200年の歩みを概観できる。余談だが、著者は民俗学会内では結構恐れられているオッサン。なのだが、この間はじめてお見掛けした時の印象としては、意外と穏和な紳士だった。人はみかけじゃわからんね。2009/10/27
Shiki Magata-ma
5
京極夏彦や西尾維新の妖怪に関わる小説の購読、巷間での日本国内のある島嶼部の現代の本州とは全く異なる習俗の風説などを受けて、長らくこの学問への淡い憧憬を抱き続けてきた。この書は日本の中での民俗学というひとつの組織の趨勢を、ある結節点となる時期まで記述している。どの場所でどの会議が開かれたかという呪術的結界に躍動を感じられぬのなら購読を薦めない。この本の描く時代の民俗学は、なにが民俗学で何がそうでないかの境界を定めることに苦心していて、そしてどこまでも柳田という男の影響下から免れることを敵わなかった。2017/09/08
メルセ・ひすい
3
12-103 赤23 粘菌の権威・天皇に敬愛された・南方熊楠様の実力、島で陛下に御講義! 真っ向から難攻不落の柳田國男批判、学識の深さに敬服。権威にとらわれない(大英博物館勤務・5ヵ国語以上堪能)・自由な発想で柳田の仮説や見方にも厳しく批判し、民俗学の停滞から、進展に大きな力となった。 ・民俗学はいかに形成され、発展してきたのか。近世文人の活動や明治期の人類学にその萌芽を探る。明治末の民俗学の成立から第二次世界大戦後の進展までを、社会の動向をふまえて描き、今後の方向性に指針を与える。 2010/01/31
まのん
1
柳田國男が存命の時代の民俗学が想像以上に社会と深い関わりを持っていたことを認識。今はどうなんだろう、続編に期待。2014/01/09